「う~ん、マズい。仏壇の味がする」
「仏壇食べたことあるん?」
「ないけど食べれば間違いなくこの味や」
「あるよな、保健室の味とかな。食べたことないけど味わかるねん」
鼻と口は繋がってるからな。
嗅げば味の察しはつく。
鼻を指で強くつまめば、嗅げない。
見たくなければ目を閉じればいい。
言いたくなければクチをかたく結ぶことも出来る。
しかし耳をてのひらで押さえても、聞こえてくる音を完全に遮断することは出来ない。
人差し指を耳の穴の奥へ奥へグイグイ突っ込んでも、筋肉の音が聞こえてくる。
塞ぐことが出来ない耳は、音を、声を、言葉を、拾う。
しかし私は、耳を閉じることが出来る。
すごく集中している時には自分が呼ばれているのにも気が付かないし、周りの雑音もまったく聞こえない。
それほど私は無音の中に身を置く。
耳を閉じると色が鮮やかに見えるので、色ってこんなに種類あるんやな~と思う時はたいがい何も聞いていない。
「私、耳閉じれる。」
と言うとおばーちゃんが決まってこう言う。
「おまえはヘンなことを言うから、ウチではいいけどヨソでゆーたらいかんよ」
おばーちゃんは私よりもハイレベルでヘンなことを言うが、90歳を過ぎたおばーちゃんの時代には『変人扱い』がすごく傷つくことだったのだと思う。
おばーちゃんは神経質やからな。
私は繊細ではないので、未だにベラベラとヘンなことを口走る。
本気で私を変人だと信じ込むひとがたまにいるが、そのひとが私を変人だと信じて疑わないのならそのひとにとっては、私は間違いなく変人である。
私が変人かどうかは関係ない。
意外に私がまともだという事実は、そのひとにとっては無意味なのだ。
そんなわけで私は、変人認定を受けたならば全力で変人として存在することに決めている。
私の中の変人を100%出し切る所存である。
もし仮に大半のひとたちにとって私が変人であった場合は、さすがに私も100%の変人ではなくわりかしまともな人間なので、ついつい常識が顔を出してしまい変人として存在するのには苦労が絶えないだろう。
が、そのひとたちにとっては変人で理解しがたい私でも、理解してくれているひとがひとりでもいれば、私の苦労はチャラである。
「ひとに恵まれている」とは良い人との出会いが多いことを言うのかもしれないが、大勢の敵に囲まれていながらたったひとりの理解者を得ていることもまた、恵まれていると言える。
むしろそのほうが恵まれていると思える、私には。
「コレ、用事が済んだら消えるホクロ」
私がおばーちゃんにヨソでゆーたらいかんと言われたことのひとつ。
てのひらと指に出てくる消えるホクロ。
子供の時から不定期に出てくる、何かのサイン。
昨日までなかったのに今日、突然ある。
そして突然に消える。
1~2年置きに出ることもあれば5年音沙汰がない時もある。
そして今回、10年以上出ていなかったので自分でも忘れかけていたが、突然あった。

「うわっなつかし」
私のカラダが私に何のサインを送っているのかはわからない。
用事が済めばいつの間にか消えている。
消えるような何かを私がしているのだろうが、まったく私はそれに気付けない。
今回も気付かないのだろうか。
私は気付かないまま、いったい何をするのだろう。
子供の時からしてきた同じことをするとこのホクロが消えるはずで、もし今回のホクロで気付ければ、私のこれまでの眠っている記憶の点が線で繋がるような気がする。
繋がったら論文を書いて学会で発表しよう、楽しみ楽しみ。
このホクロは私への戒めかもしれないし、忠告かもしれない。
良いことではないかもしれないが、それでも楽しみだ。
私は誰よりも飽きもせず、集中して文章を書いてきていると思う。
これからも飽きもせず、言葉を選んで紡ぐと思う。
おばーちゃんは、ヘンなことをヨソでもベラベラくっちゃべってしまう私が傷つかないかと心配しているだろうが、私は29年間、無音の中で色の鮮やかさを感じながら言葉を使ってきた甲斐があり、誰がどんな気持ちでどんな言葉をどういう風にクチにするのかが鮮やかに見える。
使われた言葉の意味ではなく、使った本心のほうの意味を紐解くので、私が言葉に傷つくということはない。
私が傷つくことがあるとしたら「言葉に」ではなく「言葉を」である。
自分自身の言葉を奪われたら、きっと私は深く傷つく。
私を傷つけるための言葉を重ねるひとに私が、必ず言う言葉がある。
「あなたに言いたいことがあります」
このあとに続ける言葉を私が、奪われたことはこれまで一度も無い。
どういうわけだか私を傷つけてやろうと思っている諸君よ、君たちがどんな言葉を使おうと私を傷けることは出来ないぞ。
言葉を使っても使っても使いまくっても私は傷つかないから、本気で私を傷つけたいのなら私から言葉を奪いたまえ。
私が言いたいことがある、と言った時がチャンス。
こう言えばいいのだ。
「あなたの言葉は聞かない」
しかしだが諸君よじつに残念だねぇ、私の言葉を確実に聞いてしまっているではないか。
君たちのクチからこの言葉が出たら、それが私の言葉であることを私自身が知っている。
このことも論文にして学会で発表しよう、楽しみ楽しみ。
ふたつのことが絶妙に絡むような論文を書き上げよう、楽しみ楽しみ。
ゆぅてすまんが諸君よ、私は君たちのクセを巧みに利用して言葉を選ぶプロだ。
ひとりひとりのクセをつかんで言葉を変えているのだ、ひとりひとりにちゃんと響くように。
そのくらいのことをしないと、この医局では生き残れないということだよ、わかったかね。
あ。
『Doctor-X』を観てたもんだからつい。
しかも大門未知子じゃなくて外科部長モードに入ってたな、腹黒いほう。
集中して観てたから何も聞こえなかった。
やれやれ、やっと我に返った。
ただいまおばーちゃん、またベラベラくっちゃべってたみたい。
でも、ま、どんな凄い権力より、責任感がある人間の心の自由のほうが脅威やな。
知識のある人間に責任を持って自由にやられたら太刀打ち出来ないな、最強。
あたし、
このフタ信用しないので。

傾けたら漏れそうだから、このフタはいたしません。
このクチから飲んだら異様に熱いから、フタいたしません。
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