ポパイのさんすう

「イネさ~ん、イネ~、…てメールがアンタから届いてんのよ。運転中やったからさ。今、帰ってきたから。」
イネさんが電話をして来た。
「へ?私から??」
「そうよ、アンタからよ。」
「心当たり、ないで?てか、ケータイどこやろ?」
私がイネさんと電話のやりとりをしながらケータイの所在を探っていると、クックック…と笑いをこらえたヘイポーが人差し指をワレの胸に二回、突き付けた。
「あぁ~…。今、ヘイポーが『僕・僕。』てジェスチャー、してる。」
「ひーちゃんかぁ…そっかぁ…。まぅが体調でも崩してヘルプを求めてる??とか思ってさ。」
「飽きてんねやろ、することないから。」
「そうよねぇ…退屈よねぇ…子供は。」
それからというもの休校期間中、ヘイポーとイネさんはメル友。チョモもそれに加担した。歯医者屋さんに行って来るというイネさんにチョモが、歯医者なんて行かないで僕にかまってくれぇ!!!と無理難題をフっかける。返信が来ると「おっ!歯医者に行かずに頑張ってくれてるっ!!」と喜ぶチョモに、私は言った。
「向っとるわい、歯医者屋。アンタのヒマな時間を削る手伝いするより、歯ァ削って治療するほうがなんぼか大事やっちゅーねん。」
「え~~~~~もぉ~~~~」
ナニサマや、ヒマ人。

ヘイポーはヤカラッチなチョモと比べると丁寧なやりとりをしているが、「これからごはんを食べるからメールしないでね」という後味の悪い、別の意味でヤカラなメール。言葉を選べよ、言葉を。表現その①「これからごはんを食べるから、メールの返信が出来ないけどゴメンね。」伝えている内容は一緒だろ?
そんなやりとりの中、イネさんからヘイポーにこんなメールが届いた。

この折り紙を、むかーし昔、イネさんが入院してた時、中学生のまぅが手紙とともに送ってくれて、今まで大事にしまってたんだよ。で、その時、問題も出されてたぁ~。
じゃ、ひーちゃん、問題いくね!
8+8=4
9+2=1
183+48=4
6+3=1
それでは
89+60=?
さて、何でしょう?ひーちゃん、教えて!


「まぅ、これ答え知ってんの?」
「問題を出したコトすら記憶にねぇよ…。確かにイネさん、鹿児島の病院に入院しててん。その時に手紙を書いたのは覚えてる。お見舞いも行ったし。でも、中学生の頃って言ったら数学なんて既に頭の中から消してたからな。数学的な問題じゃないってコトだけは言えるな。」
「まぅが考えた問題?」
「んなワケないぢゃん。もしそうだとしたら、この数字に数学的な意味は絶対にないね。」
「やんなぁ??」
数学こそ嫌いという私の学力をよく知っているチョモは、4・1・4・1とキてるから4ちゃうか?という単純な答えを導いた。
「根拠は?理由は?」
「あんの?」
「なかったらおかしいやろ。」
「まぅが作ったんやったら、なくてええやろ。」
「作ってねぇーっつーの。そんなの作る頭はねぇよ。」
「じゃぁ、1。」
「なんで?」
「1やな。う~ん、1。」
根拠は、いらないらしい。
チョモは1て言ってるけど、僕は5だと思う。とヘイポーは返信した。するとイネさんからの返信は、こう問うていた。

まぅの見出しは『頭を使おうポパイのさんすう』てなってるけど、張本人はなんて言ってる?

記憶にないと言っているまぅが一番考えてる、とヘイポーは実況した。チョモと私は、この見出しにおおいに混乱した。「さんすう」なんだ…「さんすう」なのか。
「さんすう、の意味なんて絶対ないと思うけど。ポパイやろ?そこがポイントやねんって、絶対。」
「ポパイって?」
「セーラーマンやんか。ほうれん草!ほうれん草を食べたらポパイ、強くなんねん。そうゆうカンジかな?8つのほうれん草と8つのほうれん草で、4ポパイ、みたいな?ナンのこっちゃわからんな。報告・連絡・相談、か?」
「何がどうわかんねん、報告・連絡・相談が、どうわかんねん。」
「さぁ??」
「ほうれん草、関係あるん?」
「さぁね。だいたい、私が出す問題が『頭を使おう』てコトがあるわけないぢゃん。聞いたら『あぁ~っ!』て思うような答えやって。考える必要、ないな。」
「なんなんやろ…」
「答え、ナイんぢゃない?ただ手紙の返事が欲しくて考えさすようなこと書いてるだけで。これって何?て返事を書かしたくて。…ありえるな、そうゆうくだらないことは考えてそうやもんな、中学生のまぅ。」
「自分やろっ?!どうなんよっ?!何か、ないん?ポパイで、ヒントみたいなこと。」
「ポパイ?ポパイなぁ…船乗りやな。」
「あっ!モールス信号ちゃん?!言葉に置き換えるとか。」
「モールス信号は数字じゃナイやろ。ツ・ツー・ツ・ツ、点と棒じゃ、音・音。」
「違うか…何か思い出さへんの?自分が出した問題やろ??」
「…てか、アンタな?20年前のこと、全て記憶にあるか??ちゅーか、なんで20年前に聞かへんねんっ、イネさん。そもそもなんで今になって答えを知りたがるのかが、わからんな。20年前に知りたがって欲しいねんけど。」
その私の心の内を、私はイネさんに伝えた。

すんげぇモノ持ちイ~ネ~。答えが解らんのやけど、私でさえ。てゆうか、答え出さないまま20年近く過ごしたイネさんが不可解やし。てか、答え気になる。

イネさんは「うける~!」とウケていた。…アンタや。
「…チョモ…ウケてはんでイネさん…。厄介な出題してくれたもんや…。」
「…イネさんって…そうゆうトコ、あるよな…。なんで今さらになって、てゆうようなコト言ってくれちゃうトコあるよな…。」
「そう…あのひと、そうゆうトコ昔っからあんねん。妙なコトを考え込む癖、あんのよ。今ぢゃなくね?ソレぢゃなくね?てゆうのが、出ちゃうんだよねぇ…完全にそのへん、ズレてんだよねぇ…。」
イネさんは身内の中でも、冷静に物事を判断するタイプのひとである。情に厚いひとなんであるが、情に流されている最中にふと客観的になってしまい、それが仇となっていつも損な役回りを買って出ている結果となってしまう。要するに、冷静なおひとよしなのだ。冷静なひとがおひとよしであるわけがないのだが、そういった真逆にある性質を、兼ね備えているのがイネさんである。だから逆のことも起こり得る。ソコは冷静になって考えないと!といった場面で、よからぬコトに流されてしまう。例えば、お金のない私がイネさんちに泊まりに行く、となると「じゃぁ外食しようか~」となる。スポンサーはイネさんなのだから私は万々歳であるが「いや、家で食べよう。」と思いとどまらせる。そうすると「そうだね…。」と自分を戒めつつも「じゃぁ呑もっか~」となる。ここぞとばかりに浪費しようとするのである。私は下戸であるが酒呑みの酒の肴が大好物なので「いいね~」とノる。ノるのだが、缶チューハイひとつでアルコールは足るので、酒への費用をグレードの高いつまみに充てようと、その一品を吟味する。「ほらほら、アンタ食べたいの探しておいで~」と気前の良さは天下一のイネさん。あ~ホタテ…ホタテの珍味もええなぁ…いや~なによ・なによ、この高級そうなパッケージのサラミは…食べてみたい…、さーしーみ~~~!刺身を見たらもうアカンやろアカンやろ…刺身、落・札。てなことで刺身を大切に抱えてイネさんを探すと、イネさんはアタリメの前で銅像化しているのである。私が缶チューハイを選びに行った時にも、イネさんはアタリメの前にいた。天ぷらと揚げだし豆腐とどっちのクチかを訊こうとした時にも、アタリメの前でお取り込み中だったので声を掛けなかった。…長い…長過ぎるだろ…そんなに種類豊富なのかアタリメ…。
「イネさん、さっきからずっとココおんの?」
「あぁ…まぅ…コレどう思う?」
「何が?」
「コレ、1袋だと398円。3袋買うと1000円。アンタ…食べたいの2つ…ない?」
「気持ちはわかるけど、ないよ。」
度肝を抜かれた。アタリメの前でずっと動かなかった理由、1袋買うか3袋買うかを考え込んでいた、みたい。
「どうしよう…コレしか食べたくないけど…でもコレならいつか食べないこともないかなぁ…アンタ、1つ、なんか欲しいのないの?」
「ないってば。」
イカン。完全にイネさんは冷静な判断が出来ないクセが出てしまっている。「3袋買うとお得」に流されてしまっている。
「イネさん、今日コレしか食べないよね?絶対、コレしか食べんやろ?明日、私、帰るやん?そのあとコレ、食べるかえ?いつ食べるっちゅーのよ?いらんもんはいらんやろ、無駄やんけ。迷うまでもないコトや、コレだけ買えば?いらんもんを2つ足して1000円って、高くね?」
「はっ…そうよねぇ…私って…こんな何百円くらいのコトで迷って…」
「さっきまで外食しようとかゆってたクセに…398円に疑問を感じるなよ、て思うんやけど。」
「はぁ…言われてみたらそうよねぇ…」
言われるまで気付かないイネさんがどーかしてるっつーの。

これ、まぅがこっちにいる時にプレゼントしてくれたフリース。まだ着てるよ~。

と、イネさんは10年前にプレゼントしたフリースをまだ大事に着ていた。
私は、慌てて返信した。

まさかそのフリースにも問題が付いてるんちゃうやろな?
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by yoyo4697ru980gw | 2009-05-23 10:30 | +YOU WIN!!+ | Comments(2)  

Commented by ポバヤシ at 2009-05-23 13:01 x
5やな。答え
Commented by ちゃんねー at 2009-05-23 23:33 x
ねいしら~
だいもんの
え~こた

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