たのすぃ…リキ

私は心底楽しい思いをしている時に、とくに意識はしていないが吐息に音を乗せたくらいの音量で口から「たのすぃ…」と呟いている。自覚はあるけど、意識して言おうとしているということではない。がしかし、今は言ったあとでかなり意識をして周りを観察している。スポーツなんかをしていてアクティブに「たっのしぃ~♪」と言ったりなんかした時の周りの反応とは、明らかに違いがあるからである。

「たのすぃ…」
そう呟くと、それが聞こえた人間は「はっ」として私を見るという反応を見せる。怖いもの見たさだろうか。自分がやっていることの手を止めてでも、こっち、見る。私が呟いたことを見逃した人間に至っては「どいつが呟いたんだ…?」としばし探しているご様子。たのすぃ…のは、私・ワタシ・あたいだよぉ。
何故だろう。何故ひとは、この低音の微かな「たのすぃ…」にこういった反応を見せるのだろうか。私がこの「たのすぃ…」を口にする時はたいてい、派手に楽しんでいることはない。見た目にはすごく地味に楽しんでいる。

ランニングコースとして整備されたコースの途中に噴水が上がっている池があり、風向きと風力によってはその飛沫が、車道を通り越してなお遠い場所に位置する歩道にまで飛ばされて来ることがある。最初私は雨が降ってきたのだと思っていたのだが、いつもいつもこの場所で「あ、雨?」と思うなんておかしかないか?と気付き、それが噴水のおこぼれであることを知った。それなので、今度この道を通る時には、ランニングコース側の道を行き、かかる飛沫の量の違いがどれほどあるものかを確かめてみようと思っていた。行きにそのことを忘れていつも通りの歩道を行ってしまったので、帰りにはランニングコース側を帰って来ようと決めていた。行き、微量ではあるがやはり飛沫は歩道まで飛ばされてきていた。ミストサウナくらいの粒で。帰りにランニングコースを通ると、その粒は比較にならないくらいに大粒であった。一車線の車道分、近づいただけなのにボットボットと降り注ぐ噴水のおこぼれ。風向きだろうか、風力だろうか、行きと何が違ってこのような結果に。私は思わずその場で止まって噴水を浴びてみた。いやぁ…なんかボトボト落ちてくる。おこぼれと言えるレベルでない。しかし、やっぱり風の影響を受けたおこぼれであるようで、風が弱まると飛沫は届かない。風が強まるとおこぼれが届く。風に寄生されてるみたい…表現が悪いけど。
「たのすぃ…」
そう言ったワタシを、老人とおにぃちゃんとおばちゃんらが「パッ」と見た。老人は木陰のベンチに座っていて、おにぃちゃんはランニング中で、自転車で並進しながらおばちゃん二人が四方山話で盛り上がっていた。老人は噴水の方をホヤ~と向いていたけれどクィっとこっち見た。おにぃちゃんはランニングこそやめなかったけれど、もう私が立ち止まっている場所を走り去っているというのに、振り返ってこっち見た。おばちゃんらはバッチリ丁度、私の横を通り過ぎる瞬間だったので、話をやめて私を見た。見ている間はあんなにそ~やんそ~やん!と盛り上がりまくっていた話はウソのように止んでいた。
すごいじゃないか、「たのすぃ…」の力。タラ~とした老人、走っている青年、盛り上がっているおばちゃん二人、計4名の意識を惹きつけた。しかも呟き程度の音量4文字で。

これ…なにかに活用とか応用とか、出来ないもんかね。
例えばサ。
ものすんごい、パニックになっている群衆がいるような場面で「落ち着いてくださーいっ!」て言ったってその場を落ち着かせるのには、時間かかるかもしんない。
そんな時が『たのすぃ…力(リキ)』の出番だね。この一言で、シーンと静まり返る期待は大きいと考える。

ただ問題があって、発言後を観察してみた結果わかったことなんだけど、心底楽しんでココロの奥に楽しくてしゃ~ない想いがフツフツと湧き、その内なる声をこらえきれずにちょこっと出ちゃった時の「たのすぃ…」が、関係ないひとたちの手を次々と止めちゃってんだよね。傍若無人になりふりかまわず没頭して楽しみに浸って我に返る寸前に出た「たのすぃ…」が、他人様を絶句さしちゃってる。
群衆が落ち着きを取り戻せないほどパニックに陥って静かに出来ていない時に、そのように楽しい感情が漏れるような楽しい気分に浸れるひとなんてひとりもいやしねぇよ、てそんなことを考えているこの無駄な時間がたのすぃ…。
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by yoyo4697ru980gw | 2008-09-01 23:52 | +cool down run+ | Comments(0)  

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