そうだ、警察へゆこう。

チョモが夕食を作ってくれると言う。夕食のおかず一品を作ってくれると昨夜言うので「どうせなら夕食全部作ってラクさしてくれ。」と言ってみたら「いいで~」と言う。メニューを訊いたら、チーズ入り卵焼きと味噌汁と白飯だそうだ。…粗食か。

つーわけで、夕食の準備をなにもしなくてよいことになった私は、チョモにイッパチ農園新規下準備を頼み、ナキヒーの誕生日プレゼントの希望品である「万歩計」を買いに行った。誕生日に万歩計を欲しがる11才。…健康管理が必要なトシか?
帰宅したらイッパチ下準備が終わっていたので、粗食にイロをつけたい私は味噌汁をミネストローネに替えるべく、チョモに野菜の買出しを命じた。作るのはあくまでもチョモだけど。

裏のイッパチで人参播種に取り組む私のところに、野菜買出しを終えたチョモが悲痛な面持ちでやって来て、「大根を折ってしまってん…」と報告する。は?大根折ったくらいでなしてそんな「人生終わった…」みたいな涙目になっとんや?「じゃ、その折れた部分、使えば?そこをこんくらいに切って。人参もおんなじ大きさで。ミネストローネ作ってよ。」と頼むと、素直に台所へと向かった。…ん?…なんか、ヘンだな。「あとは?何するん?」と一作業終えるごとに裏に顔を出すチョモが、回を重ねるごとに、くら~い。…アイツ、今日で人生終わったんか??農園作業が終わったので私は、ホンマは夕食の準備免除なのだけど台所へ立った。遊びに来ていたミズオと楽しく会話しながら、「アレ、炒めて。コレ、揚げて。」と口だけ出しつつ、チョモを観察。とにかく、暗い。が、本人の出方を待つことにした。

粗食プラスアルファの夕食が出来上がり3人で食べている時も、口数の少ないチョモは相変わらず暗い。ハナモゲストの新アレンジを思いついた私はアカペラで歌ってみるも、チョモの笑いに湿気がある。夕食を終え、ナキヒーが便所へと行くと私は洗濯物をタタミにかかった。その後ろではチョモが宿題をやっつけている。私がおおかた洗濯物をタタミ終えると、チョモが宿題途中でパタ、とその場にひれ伏した。何の気なしにチョモを見る。今にも泣き出しそうな目をしてヤツは言った。

「非常に…言いにくいんやけど…財布を…失くしてしまいました…。」
「はぁ??」
「失くしてることに気が付いて…スーパーの台に置いたこと思い出したから、帰ってからすぐ戻って店の人にも聞いたんやけど…届いてないって言われて…やから…」
「アンタ(怒)!!!!!!何時間、経ってんねんっ!!」
「…うん…」
「今、何時やねんっ!!!」
「…8時…にじゅ…」
「私は、財布を失くした事に怒ってんちゃうでっ!!!今まで隠してた事を怒っとんやっ!!!」
あまりの呆れっぷりに、あたしゃ言葉を失くしたね。
「チョモ。あんた、間違ってる。」
そう言って、しばし私は考えた。そうだ、警察へ行かそう。

「交番、知ってるやろ?郵便局を曲がったトコの。財布を落としました、ていう手続きやってきなさい。いつ落としたかとかどんな財布かとか住所とか聞かれるから答えてきなさい。交番、24時間やっとるから。行きなさい、今すぐ。…自転車で。」
本当は徒歩で行かせたいトコロである。暗い夜道をトボトボ歩いて、行ったこともない交番へ行く不安と自分がやったことの反省をさしたいのはヤマヤマである。しかし、20時半。危険な香りを漂わせているヤンチーがたむろっていそうなポイントが2つほどある。…親心だ…自転車で行けアホンダラ。交番の位置をうろ覚えのチョモが私に場所の確認をするので、目印となる建物の名前をふたつ挙げた。

15分後、私は交番までチャリンコを走らせた。遺失物届け手続き中のチョモは交番の折りたたみ椅子で「わたしがやりました」とばかりにうなだれていた。どうも何らかのトラブルが頻発していたらしく、交番、大はやり。警官に襲い掛かりそうな勢いのオッチャンやら、保護者付き少年やら。チョモはそんな中たったひとりで遺失物届け。思い知ったか、ワレの犯した間違いを。「…すいません…お世話になります…」と入って行きチョモの椅子のそばに立つとおまわりさんは「…あぁ、息子さんですか?」と言って、滞りなく処理の続きを行った。そして、チョモに「これは遺失物届けと言って、これが失くした時間、ここがその住所、スーパーのことやで。これが、君の住所と名前、間違いないな?そしたら、ここに日付と名前を書いてください。」
チョモが丁寧に日付と名前を記入すると、おまわりさんはメモ用紙に遺失物届け番号を記し、
「じゃ、これが遺失物届けの書類の番号になります。帰ったら手帳などに控えていただいて。届きましたらこちらに連絡をしますね。」
と私に手渡した。
「お世話様でした…」
と頭を下げて私は、チョモに近くの公園で話しをしようと言った。
暗い暗いベンチに並んで座り、なぜいくらでも言い出す時間があったのに言わなかったかを問うた。
「…怒られると思ったから…」
案の定な返事。
「怒られるようなことをやらかしたんは、アンタや。怒られることくらい覚悟せぇ。」
財布を失くしたことはええ、私も失くしたこといっぱいある、金は働いて稼いだらええ、なぜ正直にあの時、「失くしたから戻って探しに行ってくる」って一言が言えへんかったんや?と私はチョモに言った。静かに泣きながら聞いていたチョモだったが、私の説教の中でチョモが一番呼吸を深くして泣いたのは、
「20時過ぎた真っ暗な中を、小学生にひとりで交番まで行かす親が、どんな気持がするかわかるか?」
であった。ここでチョモが泣かないような子供だったら、ホンマのあほんだら。

どうやら反省したらしいチョモは帰宅したあとも、声こそあげないが洟をすすっていつまでも泣いていた。泣きながら宿題の続きをやるチョモにイッサンは、
「チョモ、なーに泣いてんねん?」
と明るく訊いた。
「私に怒られたからとちゃいますか。」
と代返すると、イッサンは父親として喝、入れた。
「チョモ、何で怒られたか、わかっとんか?」
「…う…ん。」
「…わかってるなら、ええ。」
終了。

風呂上りのチョモに私は、いつものトーンで最後の喝を入れる。
「なぁ、今日やぁ。夕食作ってる時な、私がチョモの体をベタベタ触ってたん、知ってる?」
「…え?…そうなん?」
「うん、そう。ソレ取ってゆーて肩たたき、アレかき混ぜてゆーてケツ触り、ソコのいてゆーて背中トントン、床拭きながら足首つかんだん、気付かずか?」
「…気付かず…や。」
「はぁ…残念やな。なんでそうしたか、わかるか?」
「…さぁ…?」
「買い物から帰って来た時にチョモな、思い詰めた顔、してはってん。何か学校でイヤなことでもあったんやろか?何か悩んでやんねやろか?って思ったから触っててんや。なんかあるなら、自分からゆーやろおもて。何も言わへんから、相当思い詰めてはんねなーおもててん。まさか『財布失くした』て告白されるとはな。親はそれくらい子供の変化には敏感なんや、アンタはどうや?もっとちゃんと気付かなアカンのとちゃいますか?」
パジャマを着ながらチョモは、声をあげて泣いた。
自分のココロが確かなら、声をあげて泣くことを恥じる必要はこれっぽっちもないねやで、チョモ。
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by yoyo4697ru980gw | 2008-06-11 01:29 | +YOU WIN!!+ | Comments(1)  

Commented by s_h_i_g_e_y_a_n at 2008-06-22 04:25
そうだ! 警察に行こう!
そうだ! 刑務所に行こう!
そうだ! 裁判所に行こう!
そうだ! あっちの世界に行こう!

あ~気分転換♪

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