メイドか、ふぇ~。

最近、見知らぬひととの挨拶を言葉で交わした記憶がないに等しい。通りすがりのひとに「おはようございますぅ~」と言って目が合っているのに何の返事も返ってこなかったのには、転居当初びっくらこいていたけれど、それも5年経ったら慣れたというかメゲなくなったというか、返事が返ってこなくったって、声のボリュームを落とすことなく「おっはようごっざいますぅう~」と言ってしまえるようになった。何かの間違いで返事が返ってきた時のほうがびっくらこく。
我が子たちもまた「挨拶を言葉で交わさない」というこの地域の人たちの習慣に長らく馴染めないようであった。そして5年経ち、イチャにはそれが苛立ちの原因になったようである。
「大人のひとと目が合ったら、無視するのもどうかなぁ~って思うやんっ!やから、勇気を出してさようなら~て言うやんっ!大人は無視するやんっ!はっら立つわぁ~っ!もう絶対、挨拶なんかしーひんっ!」
私は麻痺していた、5年で。そうゆう大人のひとりに、なってしまっていたのだきっと。ある朝、私は前々日から続いた徹夜がタタって、起きてもまったく屍のような状態にあった。おはようと、言ったかどうかの記憶さえあやしい。その朝のことだったのだ、きっとイチャがひつこくひつこく、家を出る時に「行って、くるで?」と言ったのは。ヘンだな、と感じたことだけ記憶にある。一回玄関を出て行ったイチャがわざわざ引き返して部屋まで戻って来てまでして「学校に、行ってくるで?まぅ?行ってきます。」と言うのだ。「行ってらっさいっ」と、言ったかどうかの記憶もあやしい。

私は、挨拶しても挨拶を返さない先生がいる、挨拶しろしろゆぅくせに!と腹を立てるイチャに、ずっと前にこう言ったのだ。
「イチャ、こうゆうことってない?歩きながら、真剣に考え事してて、それで誰が何を言っても「言葉」じゃなくって「音」としか入ってこないような時。それって、見た目にはわからへん。大人やからって、何もかもが完璧ゆぅわけやないで。もしかしてイチャの歯切れが悪かった可能性だってあるやん?やから、ひつこくひつこく挨拶、続けてみぃや。それでも挨拶が返ってこぉへんねやったら、それは大人が間違ってると思っていいと思う。そん時は相手が先生でも、自分の意見を主張すべきやね。自分が間違ってないと確信するまで、まずはやることやね。確信するまで続けられへんような事なら主張するまでもないコトやで。」
イチャは、続けたそうだ。そして今も、続けているらしい。どうだ私は。偉そうにフいといてからに、イチャが何回もゆぅた「行ってきます」に「行ってらっしゃい」と返したのか、返さなかったのか。肝に銘じよう、私は返事を返す大人のひとりでなくてはならんぞっ!ちゃんとやれ、自分!
挨拶をしない先生は確実にいる、とイチャは言った。そしてその挨拶問題について、友人と意見を交わしたのだそうで、それを私に告げた。

「今日ササと遊んでん。で、学校で挨拶を続けてんねん、て話になってん。で、僕が『僕、朝オカンが何も言わへん時とかあったら、ひつこ~く「行ってきますっ」て、言うねん。「行ってらっしゃい」て言うまで言うねん。こないだも、なっかなか言わへんから、5回くらいゆぅたわ。してオカンは僕が「ただいま」ゆぅまでひつこく「おかえりおかえりおかえり~」て言ってる時、あんねん。」て話をしてたらな?ササが「なんで?毎日?」て言うねん。「毎日やんか。学校行くやろ、毎日?」てゆぅたら「朝、何か言う?」とかゆぅてや…。最初は、そうゆう冗談かボケかなんかかと思ってたから「なにゆーてんねん、無言か?どんだけ暗いねんっ」て言っててんけど、どうも、本気でそうみたいやねん。朝起きて、何て言うん?てきーたら「何も?」てゆーし、学校行く時は?てきーたら「黙って出て行く。」帰って来た時は?「誰もおらん。」それ、本気でゆぅてる?「家で、話しすることなんか、ある?」て逆にきかれたし…。おかしい、おもて他の人にもきーたけど、他の人もおはようとか行ってきますとか言わへんらしいわ。世の中、そうゆうことになっとうみたいや。」
「…ほっほ~う…。だからか。だからメイドカフェが流行るんやな?…メイドカフェ、知っとう?イチャ?」
もしやメイドカフェなる怪しい商売を、知らないかもと思いイチャに訊くと、うふぅ…という意味ありげな笑みを浮かべ、イチャは答えた。
「…アレな。『お帰りなさいませ、ご主人様♪』やろ?」
「お~お~知っとったか~っ!金払って、お帰りゆぅてもらわなアカン世の中やねんなぁ。ウチ来たらタダでひつこくゆぅたんのんに。挨拶なんか、無料や無料。減るもんじゃなし。」

「そうかぁ~、メイドカフェで商売成り立つんやったら、我が家も始めるかっ!」
「メイドカフェ?…その歳で言うん?アレ、着んの?ヒラヒラ。」
「ふ…ウチはラブリー戦法じゃないからな。どう?奴隷居酒屋。よろこんでっ!メイドカフェの逆バージョンかな。」
ま、セリフはこんな感じかな。
その違いがわかりやすいように、メイドカフェと比較してプレイの流れをご紹介しよう。

「おかえりなさいませ、ご主人さまっ」のツカミはこうする。
「やっと帰ったか、召使い。おせぇぞ。」

「お食事になさいますか?それとも、お・は・な・し?」の件はこう。
「酒もってこい、自力で人肌に温めてきやがれ。レンジに頼るな。」

ウンチクを語る客に対して感激するのはメイドちゃん。
「心が洗われました。もうモエは…死すまでご主人様のお傍に…萌え♪」
うっとこの奴隷居酒屋は、根性叩きなおしてくれるわいっと大将が喝入れてくれる。
「男は黙って多くを語るなっ!同じ話を何度もすんじゃねぇっ!さぶいぼ立つから近くに寄るなっ!」

「ご主人様、お腹はすいていませんかぁ?」とメイドちゃんはオムライスを作ってくれる。ケチャップでハートのメッセージ。

  萌え

大将は一週間前の残ったオムライスを振舞う。真っ赤なケチャップで引導を渡すぜ。

  生涯イエスマン

大将は多くを語らない。ただ一言。

「喰え。」
[PR]

by yoyo4697ru980gw | 2008-03-01 21:25 | +ミルニング+ | Comments(0)  

<< 今回は「密会メール」のご紹介です 惨憺さん >>