賄賂もぅたことやし行ってみよか能~

毎日毎日「んじゃ、遊び行ってくる。」と出てゆくイチャが、その日は珍しく寝転がって読書をしていた。今日は遊びに行かないわけかい?と訊くとイチャはこう言った。
「まっさん、今日、のー。」
まっさん。最近よく遊んでる女子。今日、のー。
「まっさん、ノー。…Yes、今日まっさん遊べる、イエス。No、今日まっさん遊べない、ノー。まっさん、今日、NO!!…の、ノー?」
「ちゃうちゃう。漢字の、のー。」
「能?それ、能の能?」
「その、能。」
「能・狂言の、能?」
「能。」
「あぁ…そう。今日、能、観に行くんか…」
「能、観ない。能、やる。」
「えぇ?!」
読んでいた本をパタリ、と閉じてイチャは言った。
「びっくりやろぉ?僕もな、『今日遊ばれへんねん、能やねん…』てゆーから、てっきり能を観に行くもんやおもて『能、観に行くん?』てきーたら『能、やるねん。』て。まっさん、能、習ってるらしいわ。」
「能、なろてんのん?!」
「なろてんねて。」
「なろてるて…能やで?アンタ、能やで?!…ごめ~ん、今日、能の日やねん、遊ばれへんわ~…、おんまえに~居てぇ~えござ~れぇ~えっ…たろぉ~かじゃぁ~、やい、たろぉ~かじゃぁあああぁああ~…てやるのん?!…渋いっ、かなり渋いしっ!!」
「能って…そんなん、やるん?…まっさん…渋いな…。」
「渋いよ…。小学生の嗜みとして、お琴・能楽・詩吟は三大渋やな…。」
「そうなんや…三大渋なんや…」
「いや?今ちょっと勝手に作っただけ。琴と能と詩吟を小学生がやってたら文句なしに渋いなぁ、おもて。」
「ないんかいっ。…まぁ…でも渋いな確かに…。」
それで、この渋々な能にちょっと興味を持った私は、イチャを通じてまっさんに、我が家に来て能を披露していただきたい、という約束を取り付けてもらったのであるが、まっさんは恥ずかしがってなかなか来てくだされぇいぃ~ないで候(能バージョン)。
やっとこさ台本を持って来られたとおもへば、やってよやってよ、と言っても普通に言うだけ。
「おんまえにそーろー…」
「そ~んなんちゃうやろぉ~っちゃんとやってよぉ~練習でやってるようにゆってよぉお~っ」
「だって…こんなん…めっちゃ声大きいで…」
「それで。」
「言い方もちゃうし…」
「それで。」
「えぇ~…」
「はやく。」
「… … おん~まえにぃ~い、そ~ぉろぉ~っ」
「それや~んっ!でぇ~そぉ~ろぉ~っ」

まっさんの持って来ていた台本には「蟹山伏」と書いてあった。狂言であるらしい。この「シテ」てゆ~役をまっさんがするん?と質問すると「シテ」ではないらしい。蟹の精が出てくる物語だと言うので「シテ」って変わった名前やな「シテ」は人間の名前なん?蟹のほう?と訊いたら、「シテ」は名前でもないらしい。あ、ほんなら私らがつこてる「シテ」と同じよなもん?ほら、「ほなら月曜日に待ち合わせな~、あ、日曜日にメールするわ~、あ、電話でもいいけど、ほなら一回電話しよか?うん、じゃ~ね~っ♪…して、月曜の待ち合わせ何時って??…の、シテ?」
「違う…違うけど…。シテは…なんて言ったらえぇのぉ…?うぅ~ん…シテっていう名前の役とかじゃなくって…記号みたいなもの?てゆ~か…ちゃうちゃう…そうゆうのじゃなくて…あ、主人公主人公、主人公のことをシテて言うねん。本とかで言ったら主人公のこと。」
「へぇ~。だからいっぱいセリフあんねんや~。」
「そうそう。」
このような質問をたくさんしていたらまっさんが、発表会の整理券をくれた。発表会だけでなく能楽師による新作狂言もアリ。第十回記念祝賀の舞囃子もアリ。もちろん能楽「邯鄲(かんたん)」もアリ。というビギナーにとってはお得かつ優しい一枚のチケットであるようだ。これはこの機会に観るっきゃないね。こういった古典芸能とゆ~んか伝統芸能とゆ~んか、どっちかはわからんのでごじゃるが、なんしか能とか狂言とかそれから歌舞伎に、落語ね。こういったものは自分自身で「ほな、歌舞伎みよっかな」と思い立って観に行くようなジャンルであるとは言えない。少なくとも私にとっては。ま、落語くらいまでなら、落語のまち池田も近いことやし「ほな寄席でも」と思い立つこともなくもないが、思い立つだけで実際に行くかといえば行って「春團治まつり」のメイン会場どまり。落語はまだまだその内容がつかみやすいのに、なんつーんでしょうねぇ、初心者には敷居が高い。よって指南役というのが必要不可欠であり、セットで「丁寧なきっかけ」というのも行動を起こす上で重要な要素である。

私たちはチケットを貰ってから発表会前日の夕方まで、迷いに迷っていた。炬燵の天板の上のビニールマットとの間に挟んである整理券をみながら、「この広告は印象的やな…夢に出そうで怖い…」なんてなことを言い合いながら、大いに迷った。
どうしよう…観てもわからんかったら…4時開演てのと9時半開演てのとなぜに分かれているのだ…とりあえずまっさんが出るトコだけでも観てみようか…それでちゃんとした能楽も興味がわけば…でもこの機会を逃したらもう一生能楽とは無縁の暮らしを送るだろうことは想像に難くない…どうしたもんか…いや…やっぱとりあえずでもまっさんの発表くらいは…それにしてもずっと見てると怖い…
そう迷っているところへ、夜にまっさんから電話があった。
「明日の能やけどな、私たちの発表は13時半くらいやって。」
「あのさ、この9時半開演っていう発表会のことなん?まっさんが出るやつ?」
「そう。」
「連音の時とおんなじホール?あそこ?」
「うん。」
「でさ、連音の時は一つの演奏が終わるまで会場に入られへんかったやん?能もそうなん?演目の途中で中に入ったらあかんのん?」
「ううん、途中でも出入りは自由。」
「そっかそっか。じゃ、明日ね。ありがとね。」
「うん、ばいば~い。」
こうまで「丁寧なきっかけ」をくれたとあっちゃぁ、さもありなん行くことで決定だ。そっかそっか、行って自由に出たり入ったり出来るとあらば気が楽ってもんよ。私たちは、すっかり行く気満々になった。
「もし、まっさんが能面とか被ってたらどれかわからんかも。まぁ、子供やから素顔やろうけど、でも衣装着てすんごいメイクしてたりなんかしたら、どれかわからんかったりして。」
「声聞いたらわかるやろ…」
「声で確かめるのは無理やで。普段出してる声でセリフ言うようなモンとちゃうもん、狂言。何て言ってるか聞き取るだけでいっぱいいっぱいのはずやで。声色聞き分けるなんてまず無理ちゃう?」
「月曜日に『まっさん、どれやった?』とかきーたら怒るやろ~なぁ、まっさん。」
「わからへんかったら、月曜日に『すごかったね~』て濁しといたほうがいいな。」
「そやな。」
私たちはそんな計画を立てて翌昼、能楽観賞へと出掛けたのであった。
d0137326_2352312.jpg

[PR]
by yoyo4697ru980gw | 2008-02-11 23:07 | +談合料亭『千徒馬亭』+ | Comments(0)

どうでもよいことを考えはじめたらキリがおへん どうでもえぇのについつい考えてまう どなたサンもその状態が「ミルニング」どすぇ


by MA