どうでもよいことを考えはじめたらキリがおへん どうでもえぇのについつい考えてまう どなたサンもその状態が「ミルニング」どすぇ

戦争を語る耄碌先生

26年前、私が中学生の時の技術を教えていたのが、耄碌ジジィと名高い教頭先生。
戦争の話ばかりするのでまったく授業が進まず、テスト前に慌ててテスト範囲だけをやるスタイルで、落ちこぼれの私でも高得点がとれるラッキーな科目。

ある日、耄碌先生は戦地に狩り出され「死体を集めて来い」と命令されたそうな。辺り一面が焼野原で、バラバラになった戦死者の遺体が点々と転がっている。その場所で「人間ひとりの身体が揃うように並べよ」と指示される。周りには自分と同じ年頃の少年たちが、同じように死体を集めて並べているのだそうだ。

「俺の心臓にはよぉ~今じゃぁ毛ぇが生えてんだけどよぉ~その時は痛んだよ、まだ若けぇからよぉ~」

死体をとても直視できない。目の前のバラバラの腕や足が、亡くなられたかたの腕なのか足なのか、知る術は無い。顔がわからなくなっている上半身だったりもする、戦地ではそういう死体が当たり前だから、部位が揃えば御の字なのである。
ろくろく見れもせずに腕を2本持って行く。

「そしたらよぉ、馬鹿野郎!て怒られるんだよな、見てねぇから右ばっか持って来ててよぉ。仕方がねぇから左手~左手~て念じながら下向いて探しに行くんだよ、また」

すると向こうから、とても生きた人間とは思えない目をした少年が、死体の部位を抱えて歩いて来るのが見える。
「お~い!オマエ、左手をどっかで見なかったか~?」
と声を掛けても反応が無い。
ばかりか耄碌先生の横を素通りしようとする。
耄碌先生が少年の肩をつかむ。
「おい!オマエ、大丈夫か?」
我に返った少年に、自分が左腕を探していることを告げると「向こうの方で見たような気がする…」と後ろを指差された。
辺り一面は焼野原。
目印になる建物も無い。
ただただ、下を向いて散らばる死体をひとつひとつ、見ていくしかない。

「そんなことやってたらよぉ、皆おかしくなっちまうんだよな。正気じゃないヤツらが死体を集めるのにソンビのようにそのヘンをフラフラしてんだ」

少年たちが下を向いて彷徨う。
ハッと我に返って、正気を取り戻すために空を見上げるのだそうだ。
うつろな目をしてクチをポカーンとあけヨダレを垂らし、空を見上げる少年があっちにもこっちにも立っている。

「だから君たちは空がどんだけキレイかっちゅうのを本当は知らねぇんだよ。知らねぇほうがいいぞ、それが平和だ」

戦後に生まれた私たちにとって戦争は過去のものなのに、同じ時代を生きていても、戦争体験者にとって戦争は死ぬまで現実であるということ。
そのようにして生きていかねばならない人生をこれから先、誰にも歩ませてはいけないということ。
そう感じさせてくれるような話を語ってくれる先生がいることは、道徳教育の時間を設けるよりも、確実にひとりひとりの心に良心や善悪の判断を植え付けると思う。

技術の授業内容やテストの点数のことはまったく記憶にない。なのにこの話は26年もの間、忘れていない。それほど心に残る話だったし、自分を律するひとつの指針になってきたと思う。空を見上げると時々、この空の美しさの本当のところは私の目には見えていないけれど、それが見えない私の心はちゃんとキレイなのだろうかと思ったりする。

こんなにも長く、人間を教育するなんて、じつは真の教育者なんじゃないか。
戦後71年…耄碌ジジィめ、やるな。






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by yoyo4697ru980gw | 2016-12-04 12:36 | +ミルニング+ | Comments(0)
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