笑道入門サル治療:完全麻薬断ち

覚せい剤使用者になってしまったら、使用する前の自分には戻れない。
一度やってしまったら、あとは「やめつづけている」という状態の自分になる。
何かにつまづいたり苦しんだりする度に、覚せい剤のことが頭に浮かび再び手を出しそうになる。それを強い意志で「もう二度と手を出さない」と自分に言い聞かせ続けることを一生やるのである。そんなに強い意志があるなら、最初から手を出していないはずである。だから覚せい剤の再犯率は高い。

医療用麻薬を完全に断って一週間が過ぎた頃、私の頭は急にハッキリした。
それまでは週に2回、医療用麻薬オキノームを定時に服用し、それでも毎日服用している時より眠気が少ないと感じていた。そして頭もハッキリしている自覚があった。しかし、完全にやめた時の頭のハッキリさと言ったら『自分の住んでいる世界が自分の住んでいるように感じる』のだ、苦も楽もなく、とても現実的に。
ペイン先生が、麻薬を服用している人でやめた人は全員がやめてよかったと言っていると私に前もって告げたのは、これを痛感させるためであったか、と思った。

私が入院中どっぷりと麻薬中毒者だった時にペイン先生は『何もそんな言い方しなくたって』と皆が思うほど、麻薬に侵されている私を叱責した。私は担当医に「とっても怖い先生だからもうあの先生に会うのはイヤだ」と泣きついた。すると担当医は、もうひとり違う麻酔科の先生に診てもらうことになっている、という安心材料を私に与えた。事実、2回目の診察では違う先生だったが、結局は私の麻薬断ちに取り組む医師は怖い怖いあのペイン先生だった。「何故かあの先生やねん…」と言って落胆している私を見て、一緒に入院していた仲間たちは私を気の毒がった。「違う先生にかえてもらうこと出来ひんのん?」とミッキーが言うくらいのヒドい第一印象だったのである。ミッキーは人見知りの激しい平和主義者であるから、私のように病院から問題視されるような言動をするひとではない。そんな性格のミッキーをして「先生をかえてもらう」という選択肢が頭をよぎるほどの悪い第一印象、ペイン先生。

しかしペイン先生は、私の麻薬が抜けていくとどうゆうわけか物腰が優しくなっていった。薬の量とか種類なんか関係なく『薬を飲む』という行為自体にうんざりしている、と訴えると私のリクエストに応え毎食後に飲んでいた薬の昼食後だけを抜き、朝晩で調節するという処方技を披露した。

「やっぱりなぁ、いくら医療用ゆぅても麻薬は中毒になるらしいわ。やからあの先生がキツいこと言うたんも、自分のためをおもてゆぅてくれてんねん。せやけど麻薬、断ち切れてよかったやん」
タルセバが効き自転車でブイブイいわせている腹の出たツッチーがマクドをおごってくれて曰く、あの怖い怖いペイン先生が怖いのは私を思ってのことだと。
オモチャを辞退してハッピーセットを食べながら病状を報告し合う私たちは互いに、自分が病人のような気がしないと思っているオメデタイ人間である。頭がハッピーなんだな。

ペインの先生は怖く、サルコイドーシスの担当医は冷たい。
治療も何もしていなかった時のただ鎮痛をするためだけの投薬調整に通っていたあの頃の、人間味のある密売先生が恋しいが、今の私とは無関係の先生になってしまった。
そんなわけですっかり病院に行くのが楽しくなくなっていたのだが、改めて考えてみると怖い怖いと言っているペイン先生は今ではさほどには思われない。
冷たいと思っている担当医はもともとこうゆう淡泊な対応なんだと思うことにしよう。血液検査の数値が安定しているからといってクラッカーを鳴らされても、それはそれで反応に困るしね。
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by yoyo4697ru980gw | 2014-08-21 16:54 | +YOU WIN!!+ | Comments(0)

どうでもよいことを考えはじめたらキリがおへん どうでもえぇのについつい考えてまう どなたサンもその状態が「ミルニング」どすぇ


by MA