夏ですね~キンキンに冷えた接客はいかがっスか~

平日の12時から16時までというバイトをみつけて就職したのだが、1時間で辞職した。たった1時間で辞職した理由はさまざまあるがとにかく、職は無いのに残ったものがある。その店の商品名と値段を覚えた記憶である。バイト初日までに覚えろということだったので覚えたのだが、これが記憶からすぐに削除できるわけもなくしばらくは苦い記憶となって傷口に沁みた。だって似たような単語が出てきたらあの「魔の1時間」を思い出すからさ。

私はメモ帳3枚分に書きとめたケーキの名前と値段を独自の方法で覚えた。
「チラっとだけミスしてるチラミスティラミス350円」
「チラミスてなんやねん」
「チラっとミスしてるケーキちゃうか?」
私は基本的にケーキを食べない。食べないものは買わない。買わないものは目にしない。私がケーキ屋さんでバイトするのにひとつ問題だと思ったのは「ケーキを食べられない人間がケーキを売ることになる」という事実であった。聞かれない限り言わないと心に決めて就職したが、このケーキ屋さんで喰えないのはケーキだけではなかったことが判明した。働いてみないことにはわからないという事柄は数々あるが、就職活動をしていて気付いたことがひとつ。いつまでもいつまでも求人募集をし続けている所はいつまでも雇用が決まらない理由がある。
過去最短の時間で辞職したバイト先という不名誉な職歴を刻んだ結果となったケーキ屋さんに面接に行った日、それは5月の末か6月の初め頃のことだったと記憶するが「いつから来れる?」と訊かれ「明日からでも」と私は答えた。するとオーナーがこう言う。
「明日からゆぅてもなぁ…10日までは来てもなぁ…じゃぁ11日でええか?」
この時すでに自分とは会話のカンジが違うという予兆はあったのだ…それを私が察すべきだったと思うが、この時はなんせ即決採用だったことのほうに驚いて、細かい所まで気がいかなかったのだろう。「バイト初日のためにケーキ名と値段は完璧に頭に入れる」それをまずはすべきと努めた。その方法として、自分の覚えやすいようケーキに性格を付けて覚えたんである。
「おたけぇメロンか…たけぇな420円。ナイスナイスベリーナイスのベリーのケーキ。…あ~でもなんかシンプルでまだよかったなぁ…ほらチョコとオレンジのケーキやて。見ればわかるカンジするやん?よかったよケーキの名前がシンプルで。店によっちゃぁあるやん?複雑なネーミングさ」
「たいがいケーキの名前なんて見たまんまやろ」
「こぢゃれたトコとか『なんとかフワフワ』とかつけよんねん」
「なんで『フワフワ』が後ろやねん。『フワフワなんとか』やろ?『フワフワ』で終わるか?」
「あんたネーミングの流行りをぜんっぜん知らんな?最近はインパクト重視やで?意味とか持たせなくてもガツンと一発『だから?』って言うツッコミ系。ラー油もそんなんあったやろ?辛いんだか辛くないんだかどっちなんだかわかんねぇけどちょっぴりウマいラー油みたいなヤツ、あれ・あれ。」
「うろ覚えも甚だしいな。そんなラー油ないわいっ」
「ネーミングの長さ的にはそんなモンやったやろ?あのラー油さ?」
「長さもあやしいもんやで、そんなながないやろ。だいたい長さが合ってたらオーケーちゅうことでもないしな」
「もちょっと短かったか?辛いっちゃぁ辛いようなそこそこウマいラー油くらいのモン?」
「売れへんネーミングやな」
「インパクトだけやから」
「インパクトも弱いけどな」
「そぉお??まァとにかく、ケーキだってネーミングに凝るトコは凝るねや。天使が微笑むナントカみたいなケーキ、ほらほら…ええっとなんだっけ…あの…同級生の…今は学校がちゃうけど…あ!!ホホエミノキ!ほらっ微笑むやんけ~」
「あぁ~微笑んでるな」
「やろぉ??ケーキのネーミングっちゅうたらそんなんあんねん。スフレ、レアチーズ、とか簡単にはゆわへんで?妖精のえくぼがナンや、森の小人たちが小躍りか?湖畔のほとりの?林の蔭の小さな萱ぶきの小屋にいて?」
「サウイウモノニワタシハナリタイ?」
「なんかそんなファンタジーな世界やんな?」
「どこがファンタジーやっ」
「まァまァまァ最後の萱ぶきの小屋はちょっとね…禅の世界っぽいけどね。まぁだいたい天使とか出てくるネーミングとかでファンタジーやで。淡雪のナントカとかね。ナントカふわふわナントカとろける…」
「あ・なんとかとろけました?」
「なんとかね、なりました。シフォンケーキなんとかフワフワ、焼きプリンかろうじてとろける、チーズケーキどうにかこんがり…どうよ?売れゆき悪そうやな」
「だから『なんとかフワフワ』ぢゃなくて『フワフワなんとか』やねんて。」
ウイスキーボンボンだってボンボンで止めてキてんだから、そのうち「フワフワ」でも止めてクるって。

「ぅわっまぅ!あったで、ふわふわ!!」
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そうか…さっそく居酒屋が「ふわふわ」で止めてキたか。…それにしてもヤなカンジだ。フワフワがつくだけでスィーツみたいなネーミングになるもんだな。魔の1時間が蘇ってきたぞ。
「たのんでみよっか、たまごふわふわ」
「頼めば?でも私は絶対にいらん。」
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ヤなカンジだな、見た目スィーツぢゃん。もともと苦手だったのに…余計にダメになっちゃったな。私の心はかなり繊細なんぢゃないだろうか。ず太いと思ってたけど案外ナイーブ『傷つき易く覚め難い』←アッチの世界にイっちゃって帰ってこねぇな、こりゃ。
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あぁ、人との出会いってすごく大事。
ふわふわ…たまごふわふわ…あぁやだやだ。

この居酒屋は来るのが二度目なんであるが、一度目で私はこの店の食事が口に合わなかった。それでむぅが行こうかと誘っても「おいしいと思わない」という理由で拒否し続けてきたのである。しかし「一度アカンかったらそれで拒否か?」とむぅが言うので「一理あり」と思い今一度、行くことにしたのである。結果はやはり口に合わなかった。30円の駄菓子屋のアイスが一番ウマいと思っている貧乏舌の私の口に合わないということは、この店の料理がマズいわけではないのだと思う。しかし、ここの食事を私は「おいしい」とは思えない。その理由が、二度目ではっきりした。この店のシステムが私には合わない。何年か前に来た時と同じ「全テーブル個室」の空間、それは悪くはないと思う。システムは少し変化していた。個室に案内した女性が言うのである「当店のシステムはご存知ですか?」いいえ、知りません。「こちらの紙にメニュー番号を書いて呼び出しボタンを押してスタッフに渡してください」
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あ、そう。メニューには全て番号がふられ、食べたい物の番号を書きボタンを押したら、毎回違うスタッフがその紙を取りに来て、紙を受け取ったスタッフとは違うひとが食べ物を届けに来る。入れ替わり立ち替わり違うスタッフが接客をするが、ミスは無い。そしてノンミス・スタッフの誰とも一切、目が合わない。そうかい…。私は、こう書いた。
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ピンポ~ンと呼び付けて、無言で紙を渡す。思わず「お願いしますぅ~」と言いそうになってグっとこらえた。ほどなくして水3つが「お冷でーす」とテーブルに置かれた。
「水?水ってゆぅたん?」
「ゆぅてないで、書いてん。この紙に水・3て書いて渡したの、来るかと思って。来たねぇ~」
書けばノンミスやからね。数年前をはっきりと思い出したよ。結婚記念日の食事として二人で来たんだった、いろんなものをチョコチョコ食べたいから。その時からココは、個室にスタッフがスっと食事を運ぶスタイルだった。「〇〇でーす」ちゅうて暖簾の隙間から半身入ってテーブルの端にポンと置いて去って行くシステムだった以前から。それがより「血の通わない接客」にバージョンアップしていた。
絶対にミスをして欲しくはなく、自分たちのためだけに時間を使いたくて、少しのプライバシーをも害されたくなく、今日あったばかりの人間とは目も合わせたくないという気分の時にココを利用しようと思う。悪いが、一生ないな。
無駄は省くべきだと思う、スムーズな対応も大事かと思う、効率的にすることでコストダウンも狙えるだろう。公立の高校が企業に行ったアンケート「人材に対し一番求める能力は何か」という質問に企業の8割が「コミュニケーション能力」と答えたらしい。だから高校ではとくに「コミュニケーション能力」の強化にあたっているようである。各学校独自の取り組みを高校説明会のアピールポイントにしている高校が多い。
企業はコミュニケーション能力の高さを求めておいて、その能力を発揮できる会社づくりをしているのだろうか。この居酒屋のようなシステムで接客させていたら、そりゃ宝の持ち腐れやで。無駄を省いて何するって「接客」せんで何すんの?無駄を省いたぶん接客を充実させていこう、スムーズな対応で接客の質を上げ、コストダウンして接客に還元していく。それが店の儲けになるから接客に力を入れるんぢゃないの?接客に満足したお客さんがリピーターになってくれるから「接客」を大事に考えているんじゃないの?
ミスがないことが質の良い接客なのかな?プライバシーを守りに守られると居心地が良いものかな?紙に書いて処理するシステムにするくらいなら、いっそデジタルなこの御時世タッチパネルでも備え付けて御注文は御送信を願えばよろしいんでねぇの?厨房から「ハイよろこんで~っ!」もう居酒屋では注文が入ったからっちゅうてそう簡単にはよろこばへんで。
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いだきまーす
ごっそさんでしたー
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by yoyo4697ru980gw | 2010-07-06 10:18 | +in the sky?+ | Comments(4)  

Commented by マックス at 2010-07-06 22:04 x
それって、辛そうやねんけど食ってみたら案外辛くなかったラー油?

その店めんどくさいシステムやなぁ。
Commented by MA at 2010-07-06 23:11 x
そうやで。
ずっと売り切れてるからそんなにおいしいんかおもて食べてみたけどゆぅほどおいしいか?まァ普通のラー油なめるよりかは「喰ってる」ってカンジのするラー油、のことやでめんどっちーやろぉ??
Commented by ポバヤシ at 2010-07-07 10:21 x
そうまでして食べんでいいね。

みそラーメンにキムチの素いれて
『辛そうやけどそない辛くないサッポロ一番ミソラーメン』
食べるね、ごはんにのせて。
Commented by MA at 2010-07-07 13:36 x
だからよ~

ちなみにこの「だからよ~」という相槌は関西で通じません。
キムチの素はうまかっちゃんやろ~っ白いスープが赤くなるまで入れて出来上がりです。
ちなみにですが、この食べ方は関西どころか我が家以外では通じひんのちゃうか。

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