気軽なコース

春の初めにヒー坊と私は、神戸の観光地から徐々に山奥へと登山した。
これは登山をするために神戸に行ったのではなく、ヒー坊の知能テストを受けに神戸へと行ったその帰りに、散歩がてら神戸異人館へ寄ってみようということになり、そこから山奥への登山へと逸れて行った無計画の登山である。
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私はハナシの種にとヒー坊に、イスの話をしながら異人館へと向かった。
「…そこにイスがあってな?ええっとどっちだっけ?女は左・男は右、やったかなぁ?座るイスが決まってて、ソコに座って願い事をするとその願いが叶うちゅうイスがあんのよ。」
「イスに座るのタダ?」
「イスに座ること自体はね。でもそのイスが置いてある館に入るのに入館料は要ったと思う。」
「まぅ座ったことある?」
「ある。」
「願い事、叶った?」
「さぁ…叶ってるんじゃないだろうか…と思ってるけど、どうかな?」
「わからんの?!何か願い事をしたんやろ?それが叶ってるかどうかもわからんの?」
「それが…2回座ったんだけど…」
「2回も座ったん?」
「成り行きで、2回来てしまったもんで。1回目は昔のこと過ぎて何を願ったか記憶にない。2回目は数年前やから覚えてはいるけど、願いが叶ってるかどうかの確認がやりづらいことを願ってしまったからどうなんかなぁ?て今、思ってるトコロ。叶ってるんじゃないかなぁ?」
「いったい何を願ったん?」
私の人生なるようになっているかとは思うので、どうぞそれが狂いませんように
「んー…その願い事は叶ってるかどうかがわかりにくいなぁ…」
「やろぉ?」
「なんでそんな事を願ってしまったん?もっと夢とかなかったん?欲しいものとか。」
「だって数年前やで座ったの。もうええ大人やねんで?何かの力でどうにかしてもらおうってすがるような心境でもなかったし。そもそもやることがなくて異人館でも~って思って来たってゆぅね、イスに座るのが目的じゃなかったわけ。館に入ってイスの説明を受けて『そういえばあったなぁ』って思い出したくらいやのに。そんな急に願い事って言われてもさぁ…アンタだっていついかなる時でも叶えたい願い事をもってるってわけぢゃナイやろ?いついかなる時でも今欲しい物がサっと出る?」
「出るで?」
「何よ?」
「んー…たーとーえーばー…」
「出ないぢゃん」
「ホンマやなぁ、くっくっく…」
「そんなモンやねんて。たとえあったとしてもやで?何かの力にどうにかしてもらうために働きかけをするのは結局、自分なわけよ。イスに座って願ったから絶対に叶う!って自分が強く信じ込めば叶うだろうと思うのよ。強く信じるっていう努力を怠れば叶わない。ひとはそれぞれよね。私は強く信じて叶えようっていうより身を委ねるタイプやねんね。別のトコで強く積極的にやってるから我が身にかかることについては委ねるね。身を任せて~どこまも~…あれ?ココ行ってみる?」
「お金いるならやめとこう?節約しよう。無駄使いはせんとこう。」
「アンタそうゆうトコが子供らしくナイね。」
「だってそうやろう?節約するんやろまぅ?」
「そうだけど…観光地で現実を見せるなって気はする…」
「ボクたちここに寄っただけやろ?これ散歩やろ?観光客じゃないやろ?」
「ぅうーん…痛々しい…」
「なに?イタイタシイ、てどうゆう意味?」
「いや…ええねん…ひとりごとやから。カキワリから顔出してみて?写真撮っとこうか一応。」
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「背伸びしてソレ?」
「うん。くっくっく…」
「痛々しい…」

「この先…なんか道、つながってそうじゃない?」
「ひとんちかもよ?」
みはらし台らしいよ?行ってみようか?…て…着いた…?ココのこと?」
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「そうちゃう?」
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「なんか…近いんやねみはらし台って。展望台感覚やったな。展望台ってゆぅたら登って登って頂上行って『やっと展望台か~っ!』て感じやけど。」
北野異人館自体が北野坂を登ったトコにあるもんね。登ってきてるって感覚がマヒしちゃってんのかな。あっという間に到着「港みはらし台」
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みはらすと、こんな景色。
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さすが港町神戸。
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「なぁ?本当かな?こんな道たどって、新神戸に着くと思う?新神戸への抜け道ってコト?」
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「行ってみたらええねん、行こっ。」
「昔は行けてたけど、て道なんじゃないの?途中で道なくなってたらどーすんのぉ?」
「その時は引き返したらええやん、行くで。」
知能テストの後で散歩をしようと予め言っておいたことで、ヒー坊は首から万歩計を下げていた。だからこの歩数を稼ぐため、歩くことには意欲的である。なにも山道でなくとも歩数はカウントされるっつーの。
「なぁ?アンタは危ないんぢゃないの?登山なんて数回しかしたことないんちゃん?」
止める言葉も聞かずグングン進むヒー坊。
「まぅ?見てここ。着くみたいやで?新神戸駅。」
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「え?!異人館から300メートルも来た?!」
「来たんちゃう?」
「すぐそこやで?異人館。300メートルってすぐなんやな…じゃぁアレかな?800メートル先の新神戸駅ってそんなに遠くないかな?つーかこの表示…これって今も有効やろうな?」
「有効じゃなかったら撤去するやろ」
「わからんで?この石、重そうだしサ、道はなくなったけどそのままにしてるとか。まぁ…でも…行き止まりならこの先行き止まりっていう看板は立てるやんな?…てことはあるのか…道…」
「行こうっ!」
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「えー…なんかだんだん人の手が入ってないカンジになってきてる…崖ぢゃん…」
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「でも開けてるんよな向こう…あっこに繋がってんのかなぁ…」
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「足が滑ったらコロコロ転がって行っちゃう。気をつけてよ?アブナイんぢゃない?もう引き返さへん?」
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「落ちたらひとたまりもナイでっ!」
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「まぅ~っ!ほら~っ!やっぱ新神戸に着くで~っ!」
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きーてねぇな、ひとのハナシをよ。引き返そうっつってんのによ。
「だんだん森ってカンジになって来たけど、引き返さへん?」
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「えぇっ?!こんなに歩いたのにたった100メートルしか来てないかっ?!この石って信用してイイの?!デタラメ言ってない?!」
「100メートルくらいやと思うで?いちいち置いてるんやからさぁ…歩いた分の表示も変わってるし…信用できると思うけど…」
「そうかなぁ?そうかなぁあああ??あとワンシーズンの落ち葉で完全にこの石、埋もれそうやけどなぁ。見過ごしても支障ないってゆう扱いぢゃんけ。信用するかしないかの責任はこっち持ちってカンジ。」
「ま・道が繋がってなかったとしても、行けるところまで行ってみよう。」
「うぅーん…」
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「落ち葉いっぱいやなぁ…」
「まぅここ気を付けたほうがええで。」
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「ぎぃやぁああぁあぁああああ!!なんか音した音っ!!ヘビちゃうか?!冬眠から覚めたヘビちゃうかっ?!なんせ春やしそろそろ冬眠から覚めてもおかしくないしヘビヘビヘビっ!!!!ヘビかもヘビかも!!あったかくなったから冬眠を今やめたとこかもぉおおぉおおお~~~~~~!!!」
走って、逃げる。
「まぅ…すんげぇ早口でいろんなことゆぅたなぁ…?なんて?」
「へぁー…あぁー…ばびったぁ…。春が来て、あったかくなったから、冬眠を、今やめたところの、ヘビかも、ってハナシを、逃げながら…してました…」
「そんなことの説明をせんともっと集中して逃げたら?」
これで恐怖心を逃がしてんだからイイんだよ。
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「あったで~まぅ。」
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「すでに埋まっちゃってんぢゃんけ」
「掘ってみよう」
「ヘビおるかも気をつけて。」
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「おぉ~っまぅ!あとちょっとで中間地点やで。」
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「ソコが一番キケンな香りがする、と思えてならん。」
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ほら歩きにくい。

「お~まぅ、あった・あった、石。」
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「あれ?早くない?」
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「ふぅん…丁度中間ってのを示したかったんだ…ちょっと信頼したぞ。」
「今まで石の写真撮ってて信用してなかったん?」
「いいや?信用はある程度してたよ?その信用が、この丁度中間地点の表示で信頼に変わった、てことかな。」
「何か違いがあるん?」
「大アリやね。今まではこの石を目安に歩いてた。でもここからは違う。この石に委ねたね。身を任せて~新神戸まで~。」
「くっくっく…委ねるタイプ?」
委ねてごらんさい。
ほら見えてきたでしょう?
向こうの
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開けた世界

しっかし
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ココだけ
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かなり別世界やね
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同じ新神戸とは思えないね
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出発地点であった神戸異人館と到着地点である新神戸駅の距離表示がとうとう逆に。
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おお~見えて来た~!!
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「ほらっ!なんか人の手が加わってるカンジが出てきた~っ!」
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「ほらっ人工的な~っ!!」
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「おぉ~っ!!」
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「ついにアスファルトが~~~~!!」
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「あれ?!ここからスタート?!ここから北野異人館へ行くんや…」
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こうべの森
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森すぎる
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現在地、ココ。
まだ森の中みたい。
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ここから気軽に行かなきゃなんなかったのか…向こうから来てる間、気が気じゃなかった…という逆散策をしてしまったな…」

「こんなコースを辿ってきたんやなぁ…ココでロープウェイのひとたちに手を振ってたんやな。」
「だいぶゴールに近いトコで手を振ったんやな?」
「そうみたいやなぁ?あんなに人恋しくて手を振ってたのに…ゴールが近かったんやな。」
森の中を歩いていて、二人の見知らぬ人とすれ違った。そのお二人が反対方向からやって来たことから私たちはやっぱり道があるんだ、と安心した。ノボリーナ(登山者)らしく見知らぬ人への挨拶を欠かさないポリシーの私たちは、お二方と元気に挨拶を交わした。
「こんにちは~♪」
それ以降とんと人に出会わなくなった私たちは、あまりの人恋しさに頭上を通るロープウェイを見つけるとそのポイントに足を止め、ロープウェイが来るのを待ち、乗っている人たちに向かって一所懸命に手を振った。それはさながら「救助を求めるひと」のようであったろう。5グループ中2グループの人々が、見知らぬ私たちに向かって手を振ってくれた。私たちはあまりに嬉しくて、両手を大きく振ってピョンピョン跳ねた。足場が悪くて少々足首をグネったが「わ~いわ~い手を振ってくれたね~♪」とアホ丸出しで人間の温かみに沸いた。
そのポイントが…
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ココだったのか。

私は学んだ。
いろいろキョロキョロと見てまわるところのある300メートルは短いが、森の中の100メートルは、おそろしく長い。
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by yoyo4697ru980gw | 2010-05-24 14:05 | +朝臣寺+ | Comments(0)

どうでもよいことを考えはじめたらキリがおへん どうでもえぇのについつい考えてまう どなたサンもその状態が「ミルニング」どすぇ


by MA