怖いコワい 饅頭も靴下も

何度も何度も子機2を掻き鳴らして起こしているのにちっとも起きゃ~しない朝、ダダダダーっと階段を滑るように降りてきてチョナーが言う。
「もぉー…おー…今~、今めっちゃ怖い夢見てた~っ!!ぅぁあーーーーーホンーーーーーマ怖いすんごい怖いもーーーーーこわいっ!!」
「アンタぁ何回で起きんねんっ?内線どんだけ鳴らしたおもてんのんな?」
「2回。ちゃうちゃうちゃうねんてーめっちゃ怖い夢見てたんやってー」
「3回ぢゃっバカちんがっ!」
「ちゃうねーん、夢がさ~めっちゃ怖くてさ~こう眠っててさ~全然夢ってカンジぢゃなくてさ~見てる感覚ぢゃなくてさ~」
「弁当作りに忙しいし時間もないことやし、さっさと朝ごはん食べぇ。」
「も~~~ホンマに怖かったのに…」
「ぁいぁい~夢でよかったね。」
「も~~~~何やねんっ!」
「こっちのセリフぢゃ。」
「夢の話してんのにっ!」
「あんたストーリーを端折らへんもん、朝のウンチ忙しい時にきかしていらん。」
「ちっ…」
出来事をうまくかいつまんで話せないチョナーは、1分のエピソードを2分かけて話す。事実全部をまるまる話したうえに途中に自分の感想まで挿入するからだ。話し始めから終わるまで「一切合切」入れてくるのだ。あまりに話しの終わりがみえてこないので「その話まだ続く?」とか「ちょっと短くして?」とか言うと、大事なポイントを端折りどーでもええトコを残して話をかいつまむ。「それを言わにゃわからんやん?」「ソコの件はいらんのちゃう?」といった感じになり、短くしたらしたで短縮出来たはずの時間分が結局は要約のための意見交換になるだけである。私だって要約は苦手だけれども、そんな私でも「いくらなんでもよー」と思うチョナーの無要約過蛇足。

夜にチョナーは、「今朝は遅刻か?」とむーちんに問われ「ちゃうねんちゃうねんめっさ怖い夢見てーん」と「かいつままない話」スタート。「宮川ワッショイ」の『スベらない話』がホンマにスベらないように、「チョナーいちいち」の『かいつままない話』はホンマに、かいつままへん。
「ちゃうね~ん、今日のは夢を見てるって感覚がなかってんよな~、いや一回起きてん、目覚ましで。そん時に初めてやで、夢ってわかったの。も・ホンマに今日のは、現実ちゅうか、今の感じ?ホンマに起こってる感じ?」
「まぁ夢ってだいたい、そんなモンやけどな?」
チョナーの夢の反芻に相槌を打つと、どんどん終わるのが遅くなるでむーちん。
「いやちゃうねんてちゃうねんてー。ほら、『あ~これって夢なんやろうなぁ~』ってわかってる感じで見てる夢ってあるやん?それとは別で、『この展開は夢』みたいなのとか。な?あるやろ?今日のは違ってん、まさに今のままやってん。まったく今!ホンマにまったく今そのもの!いや~アレはホンマ凄かった。あ~れは怖いで~!」
ほーら言わんこっちゃない。夢の内容に入る前に「夢を見終えた時の感情の高ぶり」で前説しちゃう…なげぇよ。本題に入れよ早く。
「まだ今朝の夢の話してんのぉ?」
夕食の後片付けなどしながら私が呆れた合いの手を入れるとチョナーは、「ちゃうねんがな~」かなんかゆぃもって、こちらがストーリーの継ぎ接ぎをしなければならない状態で語り始めた。チョナーがむーちんに説明している夢の内容をチラチラと聞きかじるに、こうゆうことかな。

ものすごく今現在の現実の状況と同じ具合であった夢は、チョナーが「は?!」と思った時にはすでに半年ほどが経過。一瞬にしてすっかり夏である、現実世界では寒の戻りがあったのに。え?!なんでこんなに飛んだんや??どうしよう??と思っているのに、学校へ行くと「飛んだ6ヶ月間」が無いかのように皆が振舞うのである。
「学校に行ったらみんなやぁ…普通に半年過ごしてきたみたいな態度でさぁ…オレだけにその間の記憶がないねん。やろうと思ってたこといっぱいあるのにさ、何一つできてないままやんけ。も、ほんっっっっっっと、怖いから!目覚ましで一回起きてそん時に『あっは~…夢ぇ~…』てわかった安心感やな、そのまま止めて眠っちゃったな、いや~怖かったコワかった。」
落語的だな。
饅頭こわいっていう落語があるぢゃん。怖い物でビビらすっていう悪ふざけをするのに何が怖いかって訊くんだけど、饅頭が怖いって言うの。そしたら饅頭をばっかばっか家にほりこまれんねん。「わ~怖い~助けてくれ~勘弁してくれ~饅頭コワい~~~」とか言ったら、どんどん入れろ~!てなって、怖い~怖い~ゆぅて饅頭を食べてるっていうね。
そのズル賢いほうぢゃないねんな、残念やけど千徒家の民は。からかっているつもりでからかわているほうの、落語的な滑稽さがあるよね。個人的にはすんごく好きだけど。夢にうなされることしばしばな私は、それはそれは怖い目覚めを体験してきたが、本当に怖い夢の中の一握り「夢の中の自分」しか怖くない滑稽な夢を見ている。夢を見ている間は恐怖心をもって見ていたのに、その恐怖感を話す時には自分でもウケながら話しているのだ。そうだなぁ「夢の中の」自分しか怖くなかった夢の第一位はアレかな、眠ってたら子供がやって来て私にどんどん靴下を重ねて穿かせるっていう夢。怖いだろ?左右で色もサイズも違うんだぞ?ある意味、気持ち悪いだろ??

チョナーの恐怖は「やりたいことがやれないまま半年が飛んだ」という恐ろしいものであったようだ。半年という時間を失う恐怖感。若いのに…半年がそんなに大事なのか?やりたいことをやらぬまま、半年を失うのは恐怖のようだ。そうなんだなぁ…意欲に満ちているということでよろしいか。「やれる」という確信を持っているということで、よろしいか。
はぁー感心した。子供って親の背中を見て育つって言うけど、見てても悪影響を受けるとは限らないんだね。半年間の計画があるんだーチョナー。まずまずの計画でまずまずの成果があったんだー今まで。
オカンはな、やらねばならぬこと、できたらやりたいことを、やらぬまま、気が付けば1年過ぎていた、ということが一度や二度ぢゃぁないんやで~。
よく出来た息子やねー。そのままご自分の計画に則って自立していただきたい。やらねばならぬことからやってゆくのがよいだろう。ほんでその計画にやな~「売店でもう一回ゼッケンを買い足してジャージと体操服に縫い付ける」という作業も入れてみらんか?やらねばならぬことの、いの一番やで今まさに。
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by yoyo4697ru980gw | 2010-04-16 16:26 | +開楽館+ | Comments(0)  

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