幻の生徒

数学が好きだと言うひとの「数学が好きな理由」に「答えが必ずひとつである」というのがある。それを基に、答えにいきつく最短の計算式を探し出す過程が面白かったり、答えを導き出すための計算方法をアレコレ出してみたりするのが興味深かったりして、好きなようだ。しかしどう解いても、答えはひとつしかない。
それは、こういうことだろうか。
複雑な計算を重ねて解き答えを導き出しても、問題の答えが合っていなければ不正解。いくら斬新な計算式でも、それは不正解。ドコかでナニかを間違っている式だということになる。
一方、わからない箇所はひとまず置いといて、先にとりあえず答えを導き出せるようにそれらしい計算方法を探る。おおよその答えに辿り着いた所で「もうこれでイっちゃお」とひとまず置いておいた箇所はなかったことにする。しかしその答えが合っていたら?正解?なんせ答えはひとつなんである。導き出した答えがその「ひとつの答え」と合っていたら、わかるとこだけの計算式でうやむやにした部分があるとハッキリわかっていても、正解は正解なのだろうか。
今回の問題はソコなのだ。答えだけを求められた場合、計算の仕方・答えの導き方を問われない場合、答えが合っていたらそれは正解なのか。そしてそれが筆記で求められた場合、回答欄に正解の答えを書いた場合にこれはマルがもらえるのか。もらえるのだとしたらこれはゆゆしき問題である。ラッキーな1点になるからである。そんな1点がもらえるような数学なら、私も好きだ。私が数学が嫌いな理由は「答えがひとつしかない」ということである。それを芯に、「考えようによっちゃぁ正解」や「誤魔化し切った」や「そう思えばそれもアリ」の見込み評価がないから、泣くほど嫌いなのだ。

「今日な、すんごく難しい算数の問題が出たんやけど…」
「どんな?…聞きたくないけど…ただ聞くだけもヤなくらい嫌いだけど算数…もぅ泣きそう…でも言うだけ言ってみて。」
「学校の生徒が全部で481人でそのうちの6分の1が6年生やねんな?そして6年生の13分の6が女子で、女子は何人かって問題やねん。」
「だいたいでいい?」
「ダメ。」
「じゃぁ、わかんない。」
「そうやねん…なんで『481人』やねん。最初から1人…余んねん。」
「ヘイポーの見間違いってコトはない?」
「ない!それは絶対ないっ!!絶対おかしい、と思って何回も何回も何回も見たから絶対481人。ワープロミスちゃうかと思うねんけど。」
「先生が数え間違ったんちゃう?」
「違う。この学校じゃなくて『ある学校』の話しやから数え間違ってるとかじゃないと思う。そうゆうミスはない。」
「数え間違った事実がなかったとしても、そもそも算数の文章問題自体はフィクションやからな。」
「途中で回答が配られたんやけど、答えは合っててん。女子は37人。でも、どう考えてもその答えは、計算が合ってない。最初に余ったひとを『いなかったこと』にして、6年生の余りを『女子ってコト』にして出した37人やねん。」
「ほーーーー…ずいぶんと自分のカンを信じたねぇ…。確かになぁ…私が思うに、6年生の人数を決める段階で1人余るね。このひとをひとまず『ノー学年』の幻の生徒ということにしよう。で、6年生が80人ってコトになるな?そしたら今度は6年生の中に『ノー性別』のひとが1人余る。この学校には幻の生徒が2人要ることになったな?ひとりは性別も学年もわからない不審者、もうひとりは性別がどっちともわからない「この年で早くもニューハフか?!もしくはミスダンディ?!」てな疑惑が浮上した6年生。このふたりを無視したとしても、私の答えは37人にはならない。『はっきり女子と言える人数が36人、もしかすると女子の可能性があるひと1人』ってコトになる。」
そこで私はこの回答欄にはこう書くことにしたい。『あまり深く追求せずそっとしておいてあげたい1名を含む37人』人数だけで見た時にはマルだろう。
以前チョモがまだ小学生で、友達を現地調達するために公園のハシゴをしていた頃に、近所で2番目に近いオギに行ってきたと帰った日のことだったと記憶するが、ソコに幼稚園児くらいで算数の文章問題を解けるコがいたと話したことがあった。母親と公園に来ていた園児は母親の出す文章問題に答え、正解したと言う。そのオカンが出した文章問題がこんな感じだった。

お父さんが5人いました。2人帰りました。残されたお父さんは何人でしょう。

これは算数の例文なので、文章に問題は無く解答は3人である。しかし、この問題を報告した当時のチョモに私の回答は「気まずい」であると答えた。家にお父さんが5人もおり、2人が帰ったあとで3人のお父さんが一つ屋根の下に残されたのである。その心情たるや「気まずい」以外に正解はないではないか。このようにご近所レベルでは「算数の例文問題」が「二昔前の英語のテキスト」であった経験から私は「算数の文章問題の文章をより国語的に解釈する」と面白いということに気が付いた。Is this a pen?これはペンですか?NO.this is a desk.いいえ、これは机です。ど~ゆ~見間違いやっ!と誰もが突っ込んだ、シチュエーション無視のあの文章の作り方である。
その学校には、幻の生徒が存在するのだ。

「答えは合ってたんやけど、6年生を80人で考えてるからな?余りの1人はな、6分の1の確率で6年生かもしれへんやろ?でも6分の5の確率で6年以外の学年やねん。だから6年生じゃない可能性のほうが高いから、6年生じゃないってコトにしたんやけど、でも絶対に6年生じゃないって決まったわけじゃないから、もしこの1人が6年生やった時にどうすんねん、て思って。そのことをずーーーっと考えててん。昼休みにも、掃除の時間にもずーーーっと考えてたんやけど、まだわからん。結局、幻の生徒は何年生やねん?」
「…アンタ…算数の授業は何限の時?」
「…ええっと…4時間目。」
あぁよかった。算数の授業が1限とかやったら、掃除時間まで考えてたんじゃその問題が確実に他の授業の邪魔をしてるからな。
「もうこれは私の手に負えない。チョモが帰ってきたら、幻の生徒がおらんように計算を導いてもらおう。」

「幻の生徒が2人出てしまう不可解な算数の問題が今日、ヘイポーの授業で出たんやけど…チョモ。」
「それ、どんな問題やねんっ。」
「ヘイポーが言うには答えは合っててんて。でもその答えは『正解はしたけど幻の生徒を無視してさらに出現した幻の生徒を女子にした』ていうちょっとした事件が発生しとんや。やからアンタ、幻の生徒が浮遊せんようにバシっと割り切れる計算式をヘイポーに説明したげて。」
「で?問題は?」
「全校生徒481人。うち6分の1が6年。6年の13分の6が女子。女子の人数を求めよ。答えは37人。」
「その481人、ホンマ?見間違ってない??」
「私もゆぅたわ、数え間違いちゃうの、って。そうゆうミスはないらしいで。プリントを何回も見たから絶対481人やて。」
「プリント、見せてよ。」
「ないねんて。回収されたから。」
ヘイポーの話しでは、1単元が終わるとその単元のテストがあるんだけどその前にテストに向けての『こういったテストの内容ですよ』という『力だめし』とタイトルの付いたプリントが課されるんだって。その『力だめし』に今回の文章問題があったってわけ。なんか今回はすんげぇ力が試されてんなぁ『不可解学校生徒二人の謎』を解けってコトまで算数は問うまでになったのか、てコトでヘイポーと私の計算は暗礁に乗り上げているわけだけど。今日はたまたま担任が出張でマルつけが出来ないから、班に一枚の回答が配られて、正解してたからマルをつけて提出したわけよ。見た目には正解は正解なんだけど、若干名の幻の生徒の怪。謎は深まるばかり。

「生徒の数が?何人て?」
「481。…いいや、841人やったかな?」
マンモス校やな。
「6年が…6分の1?」
「…の中の13分の6が女子で、女子何人?てコトね。バシっと割り切って。」
「あぁ~…コレは中学生には簡単な問題やな。全部、分数やねん。いくで?」
「ヘイポーに説明してよ。私は幻の生徒の存在を認める派。」
「6年が6分の481人、コレはわかる?」
「わからない。結局、6年生って何人おるわけ?」
「6分の481人。」
「ややこしい6年の数やな。6年生の数は出さないわけ?」
「出ん。」
ええー…本年度、我が校を卒業する6分の481名の6年生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。6分の481名の皆さんひとりひとりに卒業証書を授与したいところですが、各クラス、6分の481名のうちの4分の1名の代表者に、卒業証書を授与したいと思います。…6年間バシっとつかめたことがなかったなこの学校は、人数をよ。
「さらにその6年の中の13分の6が女子やろ?やからー、6分の481人の6年生、カケル、13分の6の女子、この式が『6年女子』の人数。6と6が消えるー、分数のカケルってことは?割るな?481÷13、割り切れて、37人。余らん。」
「お…ドコ行った…幻の生徒。」
「最初からおらん。」
「じゃぁ、男子の数は?」
「出ん。」
「全校生徒がわかってて、6年が6分の481人やねんやろ?のうち女子が13分の6やったら、男子は13分の7おるってコトちゃん?」
「そや?でもその計算で男子の人数は出ん。何人から何人の間でおる、なら言える。」
「言って。」
「43人か44人。」
「復活したな、幻の生徒。1年~5年までのことは情報提供をしてない学校やけど、6年に関してはかなりヒント出してキてんぢゃん。6年生の人数把握くらいできんわけ?」
6年の人数わかってないと、何かと今後の行事に支障が出るぢゃないか。卒業記念品の注文、それから紅白饅頭、予備分で多目に手配するとしても、きっちり人数を把握しないとこっちだってやってらんないからねぇ。卒業記念品が辞書の場合は書店が包装までやってくれるからサ、早めに発注して個数を伝えておきたいぢゃん。有志で担任の先生に花束贈呈することにもなるし、学年の人数がわからないと徴収する金額がさァ…。一人200円ずつってコトにしたとして…全員で何人おるわけよ?それによって、花束に添えるのがハンカチになるかスポーツタオルになるか…ソコ、微妙な予算の算出になるけど?余った金額で記念写真を撮ってフォトフレームに入れて渡したり色紙に一言ずつ書いてもらうにしたって、動くタイムリミットはきてる頃合いだよね、2月は28日までしかないんだし。とにかく人数、バシっと出してくんないと。
「出ん。6年の数も、何人から何人の間でおる、なら出せる。」
「出して。」
「80人か81人。」
「ちっ…あやふやな学校やな。この情報だけではっきりわかるのって結局、何なわけ?」
「6年女子の人数。」
「あー…そう。私の中で了解したことが、もひとつある。この学校は今ハヤリの『個人情報保護法』をかなり意識してる学校や。過敏にね。」
PTAとして動きづらいことは確定や。
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by yoyo4697ru980gw | 2010-02-04 12:42 | +mender!+ | Comments(0)  

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