かえるの下手

新調した「津和野」はかなり私を虜にしている。
とにかく「津和野」は私にあたたかい。
だって、「津和野」は家具調こたつだから。

説明書で「家具調こたつ津和野」と名乗っていた「津和野」は、田舎のおばーちゃんちにあるような足とかに彫刻が施された家具調こたつの中の家具調こたつである。「津和野」を目にしたイノッキが「このコタツおばーちゃんちにあるようなヤツやなぁ」と口にしたが、アータのおばーちゃんちにはありそうにないぞ?アータのおばーちゃんちの裏に住んでいるが、あの真新しい洋風の家のドコに「津和野」って雰囲気があんだよ。おばーちゃん、トールペイントのお教室を自宅で開いてるだろう?アータのおばーちゃんちに「津和野」は無い。姉妹品の「遠野」も、無いだろう。

土曜日の休日を私は「津和野」95%で過ごした。外へは一歩も出ていない。いくら休日と言えども新聞を取るなど一歩くらいは出ようものだが、幸運なコトにベランダに一歩、出ただけである。ちゅーわけで「フルハウス」に自主的な隔離状態。とにかく、1時間のうち30分ほどはうつらうつらしているという至福この上ない時間をずーーーーっと味わい倒していた。
…そう…ヤツが帰ってくるまでは。

私の夢現の時間を突然奪ったものは、雑音極まりないチョモの奏でるアルトリコーダー。
部活から帰ったチョモに、冷蔵庫にある残り物を全て「チン」する「ちまちまランチ」の指示を出したのが昼過ぎ。品数はあるが量がどれも少ないので、ちまちま並べてさっさと食べ終えたチョモが「食器を洗い桶につけるかつけないか」くらいのタイミングで私は早くも津和野でうつらうつらしていたのだが、いつの間にリコーダーと音楽の教科書を持って津和野までやって来たのか、雑音のメロディにズー・ズーっという本物の雑音まで入っているので、たまらず私は声をかけた。
「…なんで吸うねん。耳障り。」
「プロだって、みんな吸うねんで?」
チョモの言い分では、リコーダーを吹いている時にリコーダー内部を落下中であろう唾液は吸い上げてマウスにリターンさせるのが常識だそうである。
「先生なんてもっとやで?ジュールジュルズズズズズー、こんなんやからな、音。」
「プロでも吸うならそれでいいんだろうけど、その音を演奏からはカット出来んのか。後味がわるぅて…プロならその音…消してほしい…」
「下からツバが垂れるのと、吸う音と、どっちがイイよ?吸う方がええやろ?」
「どっちもヤだよ。」
リコーダーの構造…なんとかならんもんか。

チョモはリコーダーの練習で私の転寝を阻害し続けた。
「なぁ?この曲、知ってる?」
「…はぁ…知ってるよ。その曲は知ってる。知ってるけど、リズムが違う。音は合ってて吹けてもいるけど、リズムが違う。」
「しゃ~ないやんか…それが音痴やねんから。やから練習してるんやから。」
「音はハズさへんやろっリコーダーやねんからっリズム取ってよっ音は間違いナイねんからっ!知ってる曲やからリズムが狂ってるとものすごく嫌な感じするぢゃんっ!練習するなら上達してよ…吹けば吹くほどヒドくなってる…どんどんズレてる…」
私の…気持ちよい転寝を返せ…。
「これさぁ…ハモるとめっちゃキレイで~。やからさぁ、ココちゃんにさぁ『一緒にやってよ』ってゆぅたのにさぁ…アイツ…先にスイマーと組んでたみたいでやってくれへんねん…ほんでそれ終わったら先生とハモったりしてさぁ…結局、もっかいせなアカンことになっちゃってん…」
「ひとのせいにすなよ…ココちゃんの気持ちはわかるわぁ…アンタあまりにもレベルが違いすぎんのにココちゃんに頼むからや…」
アンタ、知らんのか。ココちゃん一年で唯一、三年に交じってリコーダーの演奏で東京に行ってきたんだよ。そんなレベルのコ相手によく一緒に組もうって言えたもんやで、ド厚かましい。

それからもチョモの津和野での自主練習は続いた。ベランダへ行かないか。はるばる津和野まで来るな。
ピーピーピープープーピープーピープー
「…あ・間違ったな?」
「え・今?!間違ったの今やとおもてんの?!もっと前に間違ってたで?!」
「あ・やっぱり?!なんか間違ってきてんなぁとはもっと前に思っててん。」
そんな「微妙に徐々に間違ってきた」ことはねぇから。もっと前でハッキリと間違ってたから。
「…リコーダーを置きなさい。」
私はとうとう起き上った。幾度、私はチョモにリズムを教えてきたことだろう。音をハズすのはよしとしても、リズムは狂わないほうがよしである。せめてリズムはつかもう、音がなければやれば出来る、正確な音の長さを打てば出来る、音を取る必要は無い。
私は津和野の天板でチョモに両手を打たせた。左手メトロノーム、右手メロディ。これはもう、お得意の「計算」になっているだろう?リズムを取れ、音はリコーダーが確実に取ってくれる、オマエはリズム通りに穴を間違いなく塞ぐだけだ。
「いい?最初の『タ・タ・タ・タン』を打つ間に、こっちは2つ打ってんのはわかる?こっちはもうずーーーーーっと『トン・トン・トン・トン』て一定のリズムしか刻まへんやん?コレにソッチを合わせんねで?打つのを意識すんのは右手やで?左手を先に打っといて、右手が入っておいで、自分のタイミングで。」
「よし…よし…よし・よし・よしっ」
ウン・タン・タン・タン♪
「ちが~~~~~~~~~うっ!」
「これな?ナントカっちゅ~てな?楽譜にはナイねんけど、頭に『ウンっ』て休みあんねん。難しいなぁ…」
「はぁ…それ知っててなんで…どうして『ウン』にしちゃったん?『ウン』じゃ休みすぎてるで?『ン』しか休まへんで?『ン・タ・タ・タ・タン』やから、こっちの『トン』の瞬間だけ休んで、次の『トン』打つ前にはもう最初の『タ』が入ってるわけやん?ゆ~っくりの『トン・トン』でやってみ?アンタのおもてる休みで入ったら『タ・タ・タ』で既にヘンなビートを刻んぢゃってるねぇ…」
トーン・トーン・トーン・トーン…
「わぁああぁああっツられたっ!!」
「んーーー…『ン・タ・タ・タ・タン』で3つ。3つ打つまでにソレ全部が入る。最初の1つが『ン』の時。次が二番目の『タ』。最後は『タン』の時。『ン』・タ・『タ』・タ・『タン』。アンタがメロディを打ってる時に『トン』と合うのは2つだけ。やってみ?」
「ハイ、トン・トン・トン・トン・『ン』・タタタタタンっ」
「タがおお~~~~~~~~いっ!!なんで急に…なんで急にそんなコトに…アンタ…右手貸して…」
私はとうとうチョモのメロディまで担当。
「アンタは常に一定。私がアンタの手でメロディを打つから。絶対、自分で打とうとしなや?トン・トンの中にどう打つかのコツがつかめると思うから。」
…しかし私の介護は無駄だったようだ。余計なメロディを打ちつけしまうので、次を打つまで打った手は天板から上げるなと言っても、打った手を『トン』にツられてついすぐに上げてしまい、次を打つのに勝手に装飾音符つけちゃう。ジャズピアニストかオマエは。小粋になっとるやないか。

「この曲が難しいねん…もっと簡単なんないかなぁ…。あ・よろこびのうたは?」
私、試しに打ってみる。
「は・れ・た・る・あ・お・ぞ・ら・た・だ・よ・う・く~・も・よ~♪…あ・いいかも。ずっと『トン』と合ってる。『く~もよ~』の部分だけや。『ターン・タ・ターン』やし、簡単やわ。やってみ?」
タン・タン・タン・タン・タン・タン・タン・タン・タン・タン・タン・タン・ターン・タタタンっ。
「ちが~~~~~~~~うっ!また小粋になった~~~~~っ!」
「もぅ…もっと簡単なヤツないかなぁ…」
「十分カンタンやわ…ドコまで望むねん…」
「…なんかないん?」
「んー…カンタン…かえるのうた、してみる?♪か・え・る・の・う・た・が~」
「おっ♪イけそう。カンタン・カンタン。」
「き・こ・え・て・く・る・よ♪」
「おっ♪」
「グワ・グワ・グワ・グワ・ゲゲ・ゲゲ・ゲゲ・ゲゲ・グワッ・グワッ・グワッ♪」
「アカーーーーーンっ!ゲゲ・ゲゲのトコ、速い。」
「オマエーーーーっ!!最後のゲゲ・ゲゲくらい頑張れよっ!全部『トン』と合ってんねから『ゲゲ』くらい打てよっ!!『トン』の中に『ゲゲ』って2つ打つのが4回やないかっ!打てよっ!!ゲゲいけよっゲゲ!!!ゲゲ打てよっ!!!!」
わしゃなぁ…中学生の我が子相手に『かえるのうた』の『ゲゲ』って鳴き声の部分をこんなに熱く語る育児をするとは、思わなかったのぅ…コッチが『ゲ・ゲー』やっちゅ~ねん。

音楽センスが下の下のゲ~なチョモはちっとも『かえるのうた』を打てない。

「ハナモゲストのネタ出来たわ。『かえるのヘタ』打ってみよ~う。振付…教えるから打ちながら止めてみて。かえるのうたのリズムも打ててないのに、振付あるからな。レベルアップしてるけどマスターしな。」
音もリズムも取れないのなら、せめてゲリライブ目指して、笑いを獲れっ!!
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(感情を込めて打ち始めよう~・ハイ)
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(ハイ・『ウン』の休み中にうすうすズレを察知『ん?』)
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(気のせい気のせい・ハイ・気を取り直して感情を込めて~)
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(目を開けるとハイ・どうもうすうす?)
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(ハイ・ちょっと不安げに)
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(ハイ・なんか気付くモンがあった?)
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(ハイ・『ウン』の休み中にどうやら…)
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(そう!周りみて~!)
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(ほら!なんかちが~う!)
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(ハイ!そっちもね~!)
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(ね?だいぶちが~う??)
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(ハイ・前に乗り出して『オレだけ?!』の確認!)
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(ア・ウェ~イ!)
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(ハイ・今さらながらズレてることを自覚。『もしかしてズレてる…?』くらいの半信半疑で!)
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ゲゲ・ゲゲのトコ、うまいこと打たんでええように振付を派手にしといたから。
アンタのリズム介護にも苦労したが、画像編集にも苦労した。
私の本格的な睡眠まで奪いやがって。
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by yoyo4697ru980gw | 2010-02-01 00:06 | +ハナモゲスト ゲリライブ+ | Comments(0)  

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