ばいちゃプレイ

6年生になって自転車に乗られるようになったヘイポーが、なんと片手運転をマスター。最初の頃なんて乗るのに必死で、直進中に後ろを振り返ることはおろか、ちょいと顔を横に向けることすら出来なかった。それなので自転車に乗っている時にクラスメイトに出会い「おぅっ!ヘイポーっ!」と声を掛けられてもチラと流し目するだけで手を挙げて応えることもしなかった。それが今では「バイバーイ」と掌を顔の前で3往復ほどさせる時間、片手運転をすることが出来る上達ぶりである。
「ボク、片手運転できるようになってん。」
「ぉほ~っ進歩したなぁ~」
「やろぉ??」
「…で、もう片方の手はどうしてんの?」
「バイバイ、ってしてる。」
「…誰に?」
「知らないひとに。」
「…知らないひと?」
「うん、全く知らないひとに。なんの関係もないひとに。」
「…で…、その知らないひとは振り返してくれてるの?」
「…うぅん…バイバイってしてくれたひとはまだひとりもいないけどー、でもちょっと手をあげて『うん・うん』みたいなひとはいる。」
「男の人?女の人?若い人?年寄り?」
「バス停でバスを待ってたひとでおばーちゃん。」
自分の受け持ちの仕事である「スーパーへの水汲み」の道中でヘイポーは、自転車からの「ばいちゃプレイ」を楽しんでいるらしい。老若男女を問わず目を合わせ、やみくもに「ばいちゃプレイ」をしていたが、数をこなすうちに「好反応」を得るためのポイントを見つけたという。

基本的に「ばいちゃプレイ」をする時には、その相手は「止まっていて対面しているかそれに近い向きである人」と「自分の進行方向とは逆からこっちに向かって歩いているかゆっくりな自転車に乗っている人」が、ターゲットにロックオンされるみたい。
「なんか急いでそうなカンジ」のひとだと目が合いにくいのでダメ。会話が盛り上がっているような2人以上の人たちもダメ、目が合わないから。つまり最重要ポイントは「目が合う」ということのようだ。しかし、その目の合いようにも細かく時間設定があって、あんまり遠いうちからず~っと目が合うようなひとだと、これまた難しいそうだ。ずーっと目が合っているからすれ違いざまに「ばいちゃプレイ」をしても「へ?私?…でもさっきから目が合ってたけど何もなかったし…知ってるコじゃないわよねぇ…」と不意を突かれた的な反応になってしまって、うまくいかないのだとヘイポーは推測する。

「今日、バイバイして通り過ぎた後で『あ~バイバ~イっ!』て言ったひとがいた。ついに。ついに、ついに気付いたひとが現れた!」
「お~~~。ほんま『ついに』やね。どんなひと?」
「若い男のひと。」
「おぉ、意外。おばちゃんとかのほうが反応してくれそうやのに。」
「ボクもそう思ってたけど…なんかよさげな反応してくれるひとって、男のひとが多いで?『あっ』っていう顔をするひとはおじちゃんが多い。」
「そ~~~なんやぁ??おじちゃんなんて愛想もクソもなさそうやのに…いやぁ…こりゃ『おじちゃん』たちに悪いなぁ…『おじちゃん』のポイントをもっと高くしなアカンな。あと一息やね、続けてたらきっと手を振ってくれるんちゃう?」
「うん。やからもうちょっと頑張ってみる。」
まァ「もうちょっと頑張ってみる」のはおじちゃんのほうなんだろうけどね。「手を振ってあげるというあと一息」を踏み出すのはおじちゃんなんだし。

「まぅっ!まぅっまぅう~~~~っ!!」
薄暗い時間になって水汲みから帰って来たヘイポーが、笑いを噛み殺しながら玄関を開けるなり私を呼びに呼んだ。
「はい、何でしょ?」
「とうとうっ!!!!とうとうやでっっ!!!!!!!」
「あ・そう?!キた?バイバイ?!」
「うんっ!!」
「おじちゃん?」
「おじちゃんっっ!!」
「おぉ~~~~。記念すべきおじちゃんDAYか…。どんな風に?」
「あんな、犬を散歩さしてるおじちゃんにバイバイしてん。そしたらバイバイしながら『お~~~~元気かぁ??』って。」
「なんと…一気にハイレベルまで達したな…。ソレもう最高級ばいちゃプレイちゃう?」
「うーん、そうやと思う。バイバイしただけじゃなくて『お~~~~元気かぁ??』までやもん。めっちゃ嬉しい。」
「続けた甲斐があったねぇ。」
「うん、あった…。明日からも頑張ってみるわ。」
苦節4ヶ月半…その間には居替えもあり水汲みルートが増えもした。時間帯もまちまちのヘイポーの水汲みでは、同じターゲットにばいちゃプレイを試すというリベンジによる確率の甘さもなかっただろう。訊けば「犬の散歩おじちゃん」は初めて出会ったひとだと言う。頑張れヘイポー!今日もばいちゃプレイでばいちゃ仲間を獲得である。しかしいくら数を増やしても「ゆきずりの関係」で終わるのだろう。なんせ「ばいちゃプレイ」はバイバイしかしないのだから。
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by yoyo4697ru980gw | 2010-01-19 14:09 | +開楽館+ | Comments(0)  

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