ちょっと贅沢な海老っス

「わぁ~コレ、どうしたん?当たったん?」
おじーちゃんちに連泊していたヘイポーが、私のケータイに付いている『びっくらポンの当たり』を見てそう言った。
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「当たった。チョモが。」
「何コレ?」
「恵比寿サンのパクりで『海老っス』くらいちゃうか?」
「いいなぁ~…、チョモがくれたん?」
「チョモのやで。アンタが電話かけてきて『今くら寿司~』ってゆぅた日に当たってん。チョモが当ててケータイに付けといたんやろけど、ケータイって共有やん?ほぼ私のモノになっちゃってんねん、ハタから見れば。」
「あ~あの日かぁ…ええなぁ…くら寿司に行って…」
「だって二人だけやねんから…行くがな。」

その日、ヘイポーをおじーちゃんちへ送って行ったあと、むーちんも留守だしってコトでくらで寿司を食べようということになった。いろいろな種類を食べたかった私は殆どを「なぁ、半分ずっこせぇへん?」と持ちかけ、チョモはそれに応じた。3~4枚を半分ずっこで食べた頃だったろうか、これまで私の希望の皿を取り一貫を自分の皿に移して皿ごと私の分の一貫を渡していたチョモが、「ポン」と私の目の前の空き皿に一貫の寿司だけを置いたのだ。私は目の前に置かれた寿司を食べてから言った。
「ちょっと。返してよ、皿。」
チョモは私の訴えを無視して、ネタに塩とかをかける。
「今、皿もってったぢゃん。それ、私のご希望品なんやから返してよね、皿。」
チョモ、ネタにゆずポン酢とかをかける。
「返してよぉ~!ソレ私の皿ぢゃんかよぉ~!アンタはまだまだチャンスがあるやんか~!私には一回しかチャンスがないんやから~っ!貴重な一枚なんやから~っ!返してよぉ…皿かえせぇ…皿を取るな皿を、寿司だけを取れ寿司を!返してよ。」
チョモ、目をつぶって寿司を一貫、味わう。
「ドロボウ…皿泥棒がおる…目の前に皿泥棒がおる…返してよ。今返すなら許すから。」
チョモ、モグモグモグ。…こんなコに育てたつもりはないのに…ウチのコ早くも泥棒や…人生を踏み外すのはやっ。
泥棒が目の前でグルメを気取って湯葉なんか食べている。ピッピッピーって慣れた手つきでカニを注文している、皿泥棒が。カニがきて、また目をつぶって味わっている泥棒が目を開けた。口を横に広げた泥棒が私に向かって目を細め笑っている。オマエは物わかりのええジジィか。
カチ・カチ
「…ふ…返すがなほれ。」
皿泥棒、皿、倍返し。
お…おじぃちゃぁああぁああああぁぁんっ!ごめんよ、泥棒呼ばわりして。さっきまで事実上ドロボウだったもんだから。皿5枚でワンチャンスであるびっくらポンのルーレットを回しながら私は猛省した。…大人気なかったな…私。でも毎回、私のチャンスは一回しかないもんで、つい。この日の私のチャンスは二回になった。

「二人だけ行って~!ズルいや~ん!」
「あんたぁ~っ!アンタあの日っ!!思い出したでっ!!『有馬温泉行く所やね~ん♪』てゆぅ自慢の電話かけてきたやないかいっ!アンタのほうがええトコ行っとるやないか~~~~っ!!」
「くっくっく…そう、行った、有馬。いいなぁ…コレ…ちょーだいよ…。」
「チョモのだってば。チョモに言えば?」
「えー…だってアイツ…ケチやから。ほぼまぅのモノなんやろ?ちょーだいよぉ…」
「…知らんよ…私は。」
ヘイポーはもうこの『海老っス』(勝手に命名:本景品の正式名称は知らない)に夢中。おコタにゴロンゴロンして『海老っス』をいぢりたおしている。
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「ちょっとー…なにはずしてんねん…」
「いいやん・いいやん・いいやん、ちょーだいよ。」
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「こら。早く元に戻せ。」
「いいやん・いいやん、ちょーだいよ…まうぅ~…」
「私のぢゃない。」
ヘイポーにはもうケータイに戻す意思はないようである。私は夕食準備前に…と2枚の賀状の印刷を済ませるためチクリンの電源を入れた。
「ちょーだいよぉ…まぅ…えぇなぁ…コレ…見てよぉ…コレ…こんなにおじぃさんやのに…シワひとつないって…めっちゃイイやん…ちょうだい?」
「はぁ??アンタがその『海老っス』を欲しい理由って…ソコ?え?ソコなん??」
「なにがおかしん?なんで笑うのよ…?」
ヘイポーは、ブリッジしそうなくらいのけ反って笑う私を責めた。だから私は確認した。
「こんなにおじぃさんやのにシワひとつないから、ちょーだいってゆぅてんのん?」
「そうやで?…ホンマやで?見てみ?ほら。こんなに年とってんのにシワ全然ないんやから。」
私が疑ってるのは「おじーさんなのにシワがない」というキャラクターの風貌ではない。「我が子が『ちょーだい』としつこくゆぅてる理由が『シワひとつないおじーさんのキャラ』を『イイや~ん』に分類して欲しくなっている」ことである。確認したのはキャラクターのほうぢゃない、オマエだ。
「そうか…」
「ちょうだい?イイやろ??」
「うぅむ…」
私は答えをはっきり出さないまま、夕食の下準備にかかった。ヘイポーの人選ミスだ。私の所有物ではないのだから、私に所望したところで無駄である。

「なぁ…コレ…ちょーだいよ…」
台所に立つ私に近寄りヘイポーは、ポケットの中から海老っスを出した。
「ちょっとぉっ、ちゃっかり自分のモンにしちゃってんぢゃん。」
「うん♪くっくっくー…」
もぅ…シワがナイなぁ…あ・ちゃうちゃう…仕方ナイなぁ…その理由なら私の独断と偏見でもうオマエのモノだ。しかし、そうは言わない。だって言う権利はモトから無いもん。

夕食が終わりまったり~んとしているヘイポーに言ってみた。
「海老っス、返して。出してよ、ポケットにあるやろ?」
「へ?もうボクの部屋にもってったで?」
「なぬ?」
「もうとっくに二階にあがった。」
海老っスに二階にあがる意思はなかった。
そうなると「拉致」したことになる。
百歩譲って「里子に出した」ことにしといてやろう、なんせチョモのだからな。
いや…
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「散歩中にリードが外れてん…やっぱ景品の質はアカンなァ…」
これでイくか。
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by yoyo4697ru980gw | 2010-01-09 22:48 | +談合料亭『千徒馬亭』+ | Comments(0)  

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