ショールームへgoでリフォームにno

水周りのリフォームというのが一番ややこしいらしい。そして一番、金もかかる。手間も暇も金もかかることはいろんな人から聞いて知っていた。お風呂を広げ、洗面を広げ、キッチンの場所を変える。とってもオオゴトである。しかし大工のおとーさんが言う。
「住みながらやろうおもたら、大変やで。家具とか置いてしもたらクロス貼るんも大変やしな。今、何もないウチにやってしまうんが一番ええねから。」
古い家なのでそのままでは住める状態でないのは確かだが、リフォームはさすがに現金では払えない。今の今まで前の人が暮らしていたのだから住めないということはないこともないが、どうして売買契約に判をツく段になって「家がちょっと傾いている」という事実をやっと出すのだろう。これって詐欺ぢゃないのか?買いますと意思表示をして手付を入れさせる、そしてその契約書が全て整ってから「傾いている」と言う。その時点で売買契約の破棄をしたら、手付は戻らないということが発表される。家が傾いてるって知っていたら、誰も買わねぇよ。
「えっ?!傾いてるんですか?!」
と当然言う。すると不動産屋はこう言う。
「少しだけですよ?普段の生活をするのに支障があるような傾き具合ではないです。」
…だから二階の窓が開かなかったのか…一階の窓が壊れていて開かないと言っていたが、傾きが原因か。普段の生活に支障があるやないか…窓が開かんねんぞ…開けるだろ、普段の生活で窓。
窓が壊れて開かないってなコトくらい、大工のおとーさんに頼めばちゃんと直してくれるもんな、新しい窓を入れたらいいしね、と言っていたが、窓枠がいがんでんならいくらサラの窓を入れたってそりゃ、開かんだろうよ…。リフォームマンションを見に行った時に、えらい古いマンションがえらい現代的に変わっていて驚いたのだが、一箇所だけ建築の古さを感じる箇所があった。それが窓である。どうしてコレを残したんスか…と不動産屋に問うと、総リフォームをしても絶対に入れ替えることの出来ないものがひとつだけあるのだと言う。それが、窓。だから窓だけが古いまま残され、フローリングにカウンターキッチンにウォークインクローゼットのあるマンションの窓が、取って付けたように「おばーちゃんち」っぽかった。
「…なんで今ごろ、そんなことを言うねやろなぁ…」
買った後でフルハウスに行ってみると、買う前に行った時には知らされていなかった傾きを感じた。「傾いている」と知っていれば「あぁ、確かに傾いてんな…」と感じることの出来る傾き具合である。欠陥住宅で体調を崩す話しはよく訊くが、まさにそんな感じだ。
中古物件を見に行く時には必ずビー玉を持参してゆくことをオススメする。そっと置いてみてビー玉がじっとしていないようなら、買うという返事をしてはいけない。見ただけではわからない「傾いているかどうか」というのは、手付が相手に渡った後で知らされるのだ。

そんなわけで少々の傾きかかっているような古さの家なので、今後10年は住むかな~と思えば手入れをせざるを得ない安さで買ったフルハウス。こうなったらリフォームローンを組むか…とまで話に出た頃、大工のおじーちゃんの知っている業者に声をかけ「これだと激安に出来る」という職人価格のプランで「ワシがこ~たら、ごっつい安くで話しをもっていけるから。」という案が浮上。それは「お金のことはワシがやったげるんやから、あんたたちは何も心配せんでええねやがな。注文してから2週間かかるからな?やから色だけ、選んどいて。」という「支払いまでもおまかせプラン」なのであった。
キッチンやら洗面台やらを扱っている会社で働いているむーちんは、「システムキッチンにすると高い」とか「保温浴槽は高い」とかそうゆうことを知っているので、これにすると高くなるやらこれだと安くなるやらコレとコレの違いで値段が変わるやら、そんなことがわかるようで、機能面やグレード面でのアレコレで、そりゃもう「チョイスの幅」が限りなく広がるのである。こうゆう機能があればイイだろうねぇ~とかキズがつかないドアだって~とか、良いと思うものを全てつければ、オプション・オプション・オプションの嵐でべらんめぇに値が上がる。そのピッピ~っと国が抱える借金のようにあれよあれよと上がっていく値段を度外視しておじーちゃんは「IHにしとったらええがな」「人工大理石ならこれだけ色があるがな」「今はみな、こないなっとんやで~」と、新築プランのオススメで私に説明。
「おとーさん、この中で何を選ぼうがみな値段は一緒、てゆぅてたで?」
「親父がそんなん、知るわけナイやろ~っ!」
と、まぁいっろいろな「ああぢゃない」「こうぢゃない」が半日単位で繰り広げられた。
最初はカタログを見て私もあれがイイこれがイイと言っていたのだが、機能の上等をみていては果てしなく上がってゆく。あの機能・この機能・そのグレード、なんて言って自分の好みに機能を選んでいくより「標準仕様に自分を合わせるのが一番安上がりである」という結果に気付き、機能を捨てた。フルハウスで打ち合わせ中のむーちんが言う。
「オマエやろ~どうすんねん?」
「何を?」
「キッチンや~オマエやないか~どうしたいねん~?」
「…どうしたいって…そうゆうのはナイよ。私がどうかしたいのは色だけやねんもん。」
私に機能を合わしてたら、そりゃ欲が出て安くなんて出来ないよ。価格変動が無いような選び方をした仕様に、自分を合わせるの。自分にソッチを合わせるんちゃうねん、ソッチに自分のほうを合わすねん。ソッチは値段を私に合わしてはくれへんから。この色の中から何色を選んでも値段は変わりませんよ~の中から、色を選びたいってコトなのよ。この結果に落ち着くまでは、そりゃピンクもキレイね~なんて言っていた。しかし、何も手をつけていないフルハウスを見ていたら、フッと私にある思いが宿ったのだ。私は…この家に色合いの『落ち着き』を求めるぞ…。和風のモノトーンで。前のフルハウスの持ち主の色彩感覚がとっても奇抜だったのだ。最初に見に行った時から感じていたが、それは家族全員がそうだったようで「もしあの家を買うことになったとしたら…とにかく…お風呂はどうにかしないと…。」と全員が言い、最終的に一緒に見に行ったおじーちゃんも「あの風呂はなんとかせなアカンな。」と言った。風呂の壁に蛍光っぽいグリーンのスプレーがまぶしてあったのだ。…ココはスラム街か。身の危険を感じる入浴…ニューヨーク…スラム街…ビンゴー…いか~んっ!
アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイスにあった住宅団地、ローコストを追求し「住みやすさ」を考慮しなかった設計でスラム化と犯罪の増加を招いたことが失敗の最大の要因とされているプルーイット・アイゴー。入居者が激減し1972年に爆破解体されたが、この団地の廊下の壁にはスプレー缶何本つこたんや~という落書きがあふれ、無残なまでに荒れ果てていた。
ローコストだけを追求する私でも「住みやすさ」は考慮したい。「住みやすさ」って何だ「ローコストな住みやすさ」。色合いなんぢゃねぇの??「使い勝手」は自分が慣れることでローコストでイける。何かの不便がありゃぁ、自分を慣らす。もっと便利に出来たかもしれんが、3日で「こんなもんやで」と思うことにしよう。しかし「色」だけは自分ではどうすることも出来ない。蛍光グリーンを思い込みでピンクにすることなんて不可能である。やろうと思えば出来んこともないが15年はかかりそうだ。50手前くらいで視力が落ちるだろう、そうなれば情報伝達力も衰え、目で見た「グリーン」が脳に届く頃には「ピンク」に摩り替る。…視力だけの問題ぢゃないんちゃうけ?
そこで私は、風呂の壁が蛍光グリーンで二階の引き戸が動物ウヂャウヂャの柄であるこの古い家を「落ち着いた色」で改造したい、と考えた。古さを活かした「和風レトロモダン」という色合いを狙い、黒とベージュで統一。風呂もキッチンも。それをむーちんは「暗いっ!!」と大反対、働いてもいないオマエに色を選ぶ権利はないと猛反対、「絶っ対っ後悔すんでっ!もう一度、考え直せっ!!」と寸前まで言っていたが、「私の色はもう変わりません」と一歩も譲らず、引っ越しが完了したら働くという条件で私は色を選ぶ権利を得た。

考え直させたかったむーちんは、私をショールームにまで連れて行った。私が「立体で見てみたい」とも言ったし、現物を見ればきっと考え直すという勝算があってのことであったろう。がしかし結果は「ますます黒とベージュ。」と心に決めた次第である。暗い暗いと思うほどの漆黒ではなく、どちらかと言えばグレーに近い黒であった現物を実際のサイズで見たからには、もう揺るがない。
キッチンの前に立つ。シンクの前に出っ張りがある。
「これ、いるん?」
「何、これ?」
洗い物をする時に自分を支えてもらうバーだって。体重を預けるとずっと立っていてもラクだって。それにちょっとシンクとの距離が出来るから、洗い物をした時の水が自分にかからない、って担当のおねーさんが言わはる。
「おぅ…確かに、ラクやね~。でもこれもオプションでしょ?」
「そうですねぇ…」
「いりません。自力で立てます、脚力あるから。」
濡れてもいいの、そのうち乾くから。エプロンするわ、3着あるから。
ショールームからの帰り際、チョモが訊く。
「なぁ?ガスコンロやろ?Siセンサーつけるん?」
「お~~~あるなぁ~~~~~センサー・センサー。チラっとCMで聴き覚えがあるぞ…。あぁ…アレか…誰かがコロッケが好き~とか言うねん。そしたら派手なヒゲのヤツが…あのヒゲめっさ長いねん、知ってる?地面についてんねん、引きずるんちゃん?汚れるやん。アイツが言うねん、センサーが揚げ物の…揚げ物の…何をするゆぅたかな?揚げ物の行く末を見守る、みたいなコトかな?センサーが教えてくれんのか?『コロッケガモウスグ、爆発シマス。』『海老フライノウマミガ、逃ゲテルヨ。』賢いな、センサー。どうせオプションやろうけど。」
いらんな。自分のカンでイく。今まで一か八かでコロッケ揚げてきたわけぢゃないから。コロッケはな、中身を完全に冷やすことやで。油に入れたらいろたらアカン、触るから爆発すんねん。それさえ知ってたら、センサーに爆発予告なんかいただかなくても未然に防げる。カンを頼ってゆこう、私は一生。かかってこんかいっセンサ~っ!オマエさんにゃぁ「おいしそうな『こんがり』まであと一息」というこの刹那がわかりゃせんだろう。目がねぇからな、けっけっけぇっ!アら、ごぉ~めんなさいねぇ~「人間」をひけらかしちゃって、かっかっか~。ま・人間、大いにミスるけど。

キッチンを注文して出来上がるまでに、風呂を注文して出来上がるまでに、2週間もかかるのに、本当に1カ月でリフォームなんて終わるのだろうか…と、私はもう着工して1週間は経っているのに未だにそう思っているのだが、どうやらおとーさんが言うには、終わるみたい。大工さんが言うんだから、終わるんだろう。だから私は一日にものすご~く大変な仕事をこなすのだと思っていた。11月は一日20時間労働くらいに匹敵する働きをするもんだと。その助手をするものだと。
「なんか…朝も行って、ほんで昼ごはんを持って行って一緒に食べて…夕方も行ってんけど…。私に仕事が回ってけーへんねけど?おとーさんになんか手伝うことは…て言うねけど『今のところナイで』て言うねん。行ってもすることがないから帰ってきたんやけど、いつになったらあるんやろ?」
「最後までナイ思うけどな。」
むーちんは仕事の合間にフルハウスに行って、なんかしらの部品みたいなもんを届けたり打ち合わせみたいなことなんかをして、ドーノコーノというなんか大工用語みたいな言葉で棟梁と会話をする。しかし私は、「こないだ手伝いにきとったコは、チョモの同級生か?」とか訊かれて「趣味が渋いからおっさんみたいな外見してますけど同い年ですよ~」なんて答えている。棟梁との仕事には発展しそうにない用語だ。

「…今日の午前中はな?『ノコ取って』とか『コレをアッチに持って行っといて』とかの仕事やってん。」
夕食を作りながら、チョモに仕事の内容を語る。
「やからな?たいがい体育座りをしてて~たま~にスニーカーについたゴミをとってみたりしててん。そしたらな?『じゃぁ、ココとソコにコレ塗って、ハケで。』っていう仕事が回ってきてん。すごく『仕事』って感じやろ?『重要な仕事』って感じやろ??でもおじーちゃんこう言うねん。『横と下だけやで。』それ、木の防虫剤とかそうゆうのでペンキ塗りみたいなことすんねけど~、『横と下に塗ったら、2~3時間乾かして、乾いたらもう一回塗って。』塗るの10分くらい、あとは2~3時間待つねん。何もせん時間のほうが長いねん。待ってる間にごはん食べて『ほんじゃ、もっかい塗ってな。』って言われて、今度は5分で終わってん。手際がよくなってたからな、一回もう塗ってたからコツもつかんで。ほんでまた2~3時間、乾くのを待つ。そしたら、木材屋さんが来て打ち合わせ。私がきーてもわからんからむー呼んでん。そしたらむーが『オマエは何しとん?』てゆーから『コレ・コレ!コレ塗ったの、私・私!』アピールやんか。むー来た時には「待ち」の作業中やったから「何もしてない」みたくなってたけど、その前に5分で作業が終わってっから。もぅ…重要な仕事した後やのに…と思っていぢけてたら、木材屋さんが『一番エエ仕事をもろてますやん』てゆぅてくれてん。『そうでしょう?一番、大事なトコしてるでしょう??』てな…分かち合った、木材屋さんと。」
木材屋さん、昔、若き頃の我々夫婦に『30までは好きにやったらえ~ねん!』と吹き込んだ社長の、甥っ子にあたるそうな、棟梁情報。私はこの社長の一言にそうっスよねぇ~っ!!とゆう気にずいぶんとなって、今思うと「よぉあんなことやったもんやで…」ということをやってきた。でも今となっては「今しろと言われたってとてもやれない」と思うのでやってきてよかったと思う。若いって「無謀」を後先考えずにやっちゃえるパワーがあるんだな、という経験になったと思う。そういう意味で社長の一言は正しいと思う。「30まで」にやっとかないと「好きなように」だけでは出来ないコトがたくさん、ある。自分が臆病になるってのもあるし。働き口も住む場所もない状態で他県へとりあえず行っちゃう、しかも子供を2人抱えて。…そんなこと今やっていいと言われても絶対、やらない。…よく生きてたな…私たち。我が家の若きパワーに追い打ちをおかけになった社長の、甥っ子サンは、若手トリオ「我が家」の一番背の高い芸人にちょっと似ている外見でらっしゃる。

「ほな、ヒィちゃん?アレをコッチに運んできなさい。」
夕方、ず~っとフルハウスに居るのに「暗がりでミカンを食べる」という仕事しかしていないヘイポーにおじーちゃんから任務が与えられた。部活終わりに立ち寄ったチョモは、来て早々「コッチを半分だけ出して支えといて?ええか?」と「なんか大工助手っぽい仕事」というポストに就いたというのに。
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ソッチにあるものを全てコッチへ運ぶ、という下っ端仕事である。
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「ふっ…下っ端やな…。」
私は午前と午後を使って15分の重要な仕事を終えていたので、チョモに解説をした。
「あれペーペーの仕事やねん、運び屋。私が下積みの時にやってた仕事やな…懐かしい。あの次の段階が『塗り』やねん。ま・今のところ私が塗り職人やから?しばらく下積みすることやな、ヘイポーは。」
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下積み時代はダメ出しも、ある。
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塗り職人になるには険しい道のりなのだ。
…しかし…とんと「塗り」の仕事が回ってこないのだが。
「なぁ~?ヤスリをかけるとかゆぅてたやろ?あれってどやってすんの?塗るとか言ってたやん?ペンキ塗るとかそうゆうこと?」
塗り職人である私は「塗り」に意欲的である。だから、わざわざむーちんに電話をした。
「あーアレ、俺がやるけど?」
「え~…もぅ…することないから塗ろうおもたのに。」
「やるって…やるならサビを全部ヤスリで落としてキレイにしてから塗るねんで?オマエ、出来るんか??」
「そんなん、無理ちゃう?どのくらい、とか知らんし。」
「やろ?やから俺がやんねん。」
どうやらこのリフォームに塗り職人はノーサンキューらしい。
「オマエ、窓枠とかキレイにしとけば?これから汚れるゆぅたってどうせホコリがかかるくらいやろ?キレイにしとけば拭けばしまいや。」
「あー…まー…うん…。掃除かぁ…。」
「キレイにせぇよ、オマエ。」
塗り職人だったのに…。塗り職人になったばっかりなのに、もう掃除のおばちゃんに転職。はえぇな。
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by yoyo4697ru980gw | 2009-11-10 23:32 | +YOU WIN!!+ | Comments(0)  

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