レッツ トライ

「音楽のグループ分けが、1コあがって~ん♪」
音痴のチョモがルンルンと言い放った。音楽の先生Mr.Xはプロ意識の高い教師である。いや…音楽のプロだって言ってたような気がする…そもそも音楽の先生はみんなプロじゃないとなれないのかな?一番最初の授業参観が音楽だったのでその時に授業を見たが「プロ意識が高い」感じがした。もっと言えばプロ「根性」が高いと感じた。なんせ校歌をハモらしちゃったくらいなのだから。二部混声の校歌なんてはぢめて聴いたサ。つまりMr.Xは、校歌にハモリのパートを作ってしまったのだ。
そんな作曲家Mr.Xが頭を抱えている7組は、とくに男子が音痴揃い。その筆頭がチョモなのだと思っていたらド音痴のチョモが「たまらなく音痴」と表現する人物がおられる。同じ陸上部のケンケンである。彼の音痴はチョモが嘆き悲しむほどのレベルだそうだ。ケンケン…ちみに残念な報告がある…チョモに「音痴」と言われているなら、それはもう「ズレてる」とかのレベルぢゃないと思う。チョモの音痴が既に「耳障り」のレベルだから。

学習発表会のため毎日、歌の練習が課せられている現在、当然Mr.Xによる歌唱指導はいつもより厳しい。それに備え、チョモは個人的にデンタクことココちゃんに密かなる猛特訓を受けてきた。電車オタクの友人として小学生の時からの顔馴染みであるココちゃんは中学になって同じクラスになった。学校の各クラスには「ピアノが弾ける」という生徒が配置されるようになっているが、ココちゃんは7組の「ピアノが弾ける生徒」である。しかもココちゃんは、単に「ピアノが弾ける」というだけではない。『ミルフィーユ』に似たおいしそうなネーミングの音楽関係の教育を受けており、ナミの音楽の知識ではない知識を磨いているんである。音階だってドイツ語かなんかで当てちゃうからサ。ツェー・デー・エー・エフ・ゲー・アー・ハーか?中学生の知識として披露したことがプロ根性の癪に障ったのだろう、参観の時の授業では日本語で答えろとMr.Xに釘を刺されていた。…ま・そのヘンちょっとした変わりモンなんでいろいろな誤解もされるが、知識を深く学習してやまない純粋なコである。…趣味が純粋な中学生の域を超えちゃって電車でひとり遠出をしてしまうほどらしい…と個性的ではあるが、電車を愛せばこその行動であると、その愛し方が純粋なればこそであると、私は思っている。このようにココちゃんは、チョモが自分発信では入っていきにくい世界への、数々の刺激を与えてくれる存在なんである。

何にでも頑張るイイ子ちゃんのチョモが頑張っても頑張ってもウダツが上がらない教科、それが音楽である。音感というものは多分に「センス」って気がする。親が音痴だったら子も音痴、というような遺伝はないと思うが、少なからず環境的な影響は受けると思う。音楽的センスが乏しいと聴く音に偏りが生じると思うのだ。音楽家の家庭に生まれない限りまんべんなく様々な音を聴く環境なんてナイと思う。音楽に興味のない親に育てられれば、音楽を聴く機会ってのは自然と減るもんなんじゃないだろうか。音楽を聴かねば、耳も育たないのではなかろうか。補聴器のハナシを聞いて感じたことがひとつある、人間の耳は自然に雑音を「聞かなかったこと」にしていることである。補聴器は雑音だろうが何だろうが同じように音を拾うそうで、とあるひとのお母さんが老いて補聴器をつけた際、そのお母さんの年代のひとというのは和服を着ていたので、着物の襟の合わさっている部分がこすれる音がうるさいと補聴器に慣れるまで時間がかかったというのである。私たちの耳は意識していなくても、布がこすれあう音などのボリュームや会話のボリューム、車の通り過ぎる音のボリュームなどを、同時に耳にしてもバランスよく調節しているようなのだ。しかし補聴器はボリュームをひとつに合わせればどの音も同じボリュームで拾ってしまう。耳とは「聞き取る」ということに関してこんなにも「必要」「必要じゃない」を区別して音を拾っているようなのだ。
音階を聴き分ける耳ってのは音楽的なセンスがモノをゆうような気がする。センスがなければ、いくら好きでいくら音楽に触れても細かく正確に音階は掴めないのではないか。何か特別な指導を受けてトレーニングするならそのセンスとやらも矯正することは可能だろうが、普通に生活していてたいした指導も受けずに「自然に音痴がなおった」なんてことにはならないようだ、チョモを見ている限りでは。どころかチョモの音痴は年々、奇妙に悪化している。バラードがラップに聴こえたりCMソングが演歌に聴こえたりするのだ。私が「残念やなぁ…」と漏らすと「ズレてる?!なんかおかしい?!」とチョモは訊いてくるが、私は最終的に「残念だ」としか言えない。何にでも頑張るイイ子ちゃんのチョモは出来ないことを克服することにもその頑張りを見せるので、「何が残念か」という追及の手を緩めず私にその答えを求めてくるが、私はこう言うことしか出来ない「違~うっ!」。それを事細かに説明すれば今度はむーちんが私に言う「オマエが違うねん。他の人はわかんねん。オマエが思うほどズレてぇへんわっ!オマエそ~やって自慢するけどな?オマエ自分の言う事を正当化すんなよっ!」…とにかくどっちにしろ正解ではナイようだ、この千徒家の人間に求めたってサ。

それでかチョモはその克服先をココちゃんに求めた。しかし実は私、チョモの音痴をずっと好ましく思ってきたのである。
「音痴をどうにかしたいよぉぉおお~っ!」
と素直にチョモが言う度に、それが可愛らしくて可愛らしくてしゃ~なかったのだ。チョモの音痴以外は常に親の正道で過大評価し、期待もし、厳しくもして応えるようにケツを叩いてきたからね。頑張っても頑張ってもどうにもならぬ音痴こそ、チョモの欠点であり逃げ道であり、「あぁ…チョモにもダメなトコあるのね…きゃわいい。」とホっとするトコロでもあったのだ。親の贔屓目を差し引いても、チョモは頑張っていろいろなことにトライし、頑張った分だけ結果を出してゆく。アホなことばっかしているが実は勉強もしていて学年のトップグループの一員なのだ。陸上でも何かしらの試合の枠を勝ち取ってくる、素行に関しても先生の評価は上々、口は悪いがネコをかぶっているだけあって周りからの評判は悪くない、ちょっとした家事なら出来るくらいの手伝いはしているし「千徒くんは何でも出来るねんね~」という「自慢の長男」のポジションを欲しいままにしてきたチョモである。ゆえにとても「可愛げ」というものがないのだ。しかし一見「可愛げ」が欠けているようでいてその実、黙っていてはわからないのだが「足が臭い」のと「音痴」という「可愛げ」を持っているチョモ。さすがに現在、足の臭さには可愛げがなくなり、残された唯一の「可愛げ」が「音痴」ということになった。それをずっと「可愛げ」のまま大切にしたい親心も「自慢の息子」度もあげたい慾もあって、私の心はいま、複雑である。
私だってチョモが、「うまい」「音痴」「ド音痴」の三段階にグループ分けされた7組の「ド音痴」グループから一歩前進して「音痴」になったことを心から喜んであげたいよ。あんなに「音痴」を気にしていたんだから。ココちゃんの指導のお陰で「ド音痴」を克服し、「今日、ココちゃんに『合ってたっ!』ってはぢめて言われて~ん♪」という報告があれば「その調子で『うまい』のグループに!」と応援してやりたい。こんなに苦手を克服しようとココちゃんにまで協力をお願いして努力をし続けているのだから、そりゃぁ褒めてもやりたいよ。でも私は「音痴のチョモ」が好きだ。「帰宅してから風呂でもトイレでも歌の練習をしているチョモ…でも音痴。」この可愛らしさが、私が音楽の習い事を二度やって泣いて苦しんで捨ててきたこの可愛らしさが、どんなに私を羨ましがらせているかを知っているだろうかチョモよ。たいしてウマくもならずかろうじて音痴を克服したくらいの効果しか得なかった私の…結局やめて中途半端に終わった許せる音痴ぶり…あれから以降の私の生き方ってな~んか中途半端なクセがついたな。そんな中途半端なことならいっそ克服しないまま「可愛げ」でもってイったほうがよかったなぁ。

毎日の練習で力をつけた7組はMr.Xに「今日が発表会やったら7組が優勝っ!」とまで言わしめた。入学当初は「音痴がおるなぁ…」と言われひとりずつ歌わされたらしい7組男子。「お歌のレベル」が上手い・普通・音痴でグループを作れずに、うまい・音痴・ド音痴だった7組。声変わり最中で音域に欠けのあった男子を大目に見てもMr.Xは7組の歌唱力にピアノを壊してまで憤慨した。この7組の上達ぶり…やればできるコぉやで。テストの平均点が一番低いとか、ヨソのクラスのオカンからは7組は荒れてるとか聞いてるけど、頑張る生徒たちだゼっ7組!

さて、本日は発表会。
合唱コンクールはココちゃんの伴奏で。
入るタイミングの難しい弾き方をしているらしいココちゃんは、授業でひとりひとり「入るタイミングが合っているか」のテストの時、チョモの番がくると、明らかに弾き方を変えるとバレてしまうので「わかるよな?な?わかるよな?ほら、な?」という二人だけに通じる具合で弾いてくれたらしい。
「ほんでアンタ…合ったわけ?それで不合格やったら、ココちゃんのそのファインプレーが水の泡やしな…」
「ふぉっふぉっふぉ…『おっっっ!今かっ?!』てトコで入って、合ってたしなっ!」
「よくやった…よくやった…恩を仇で返さなくてホンマによかった…。」
7組のために伴奏をするココちゃんは今日、チョモの入りのタイミングのために弾くわけにはいかないだろう。
それでもチョモがばっちし入れた暁には、私も素直にチョモの頑張りを褒めようと思う。
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優勝、するといいね。Have a good time 7組。
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by yoyo4697ru980gw | 2009-10-30 09:22 | +ミルニング+ | Comments(0)

どうでもよいことを考えはじめたらキリがおへん どうでもえぇのについつい考えてまう どなたサンもその状態が「ミルニング」どすぇ


by MA