アキナイマチ

最近じわじわと実感しているが私は、伊丹というマチが好きだ。今まで住んできたマチも嫌いだと思ったことはないが、好きだと思えるほど長く居ついたことがなかった。7年という歳月が伊丹の悪いところもひっくるめて「好き」と思えるに足る時間なのかもしれない。傘や自転車や鉢植えなどが見事に盗まれるが、人々は程よく穏やかで程よく干渉しせず程よく、奇妙。定期的に変質者が現れ「お触れ書きかっ」といった古風な文面の注意を促す文書がポストインされる。手配りでインされる宣伝チラシは、まるで「突っ込んで」と言っているような手書き調。マチをフラつくと誤字・脱字を気にしない大らかな看板が立ちそびえ、水道局は「通り抜けできます」とわざわざ敷地内を通り抜け出来る事を道しるべ付きの看板で教えてくれる。マチの所々に「何かの間違いじゃないのか…」と思わせるポイントがある「ジョーダンのマチ伊丹」。不思議なマチなので7年経っても飽きないのだ。

運動会延期の代休、月曜日。ヘイポーと夕方までゆったりブラつこうかということで朝昼食のモーニングでえらいゆったりガストに居座ったあと、これといって目的もなく「買いそびれ」ているチョモの「部屋着のようなパジャマのような服」を、セール中のイオンモールで探す。なかなかサイズが見つからないので「買いそびれ」ているのである。ジャージでいんぢゃねぇかと思いジャージをみると、吊ってあるジャージに大ぶりの鈴が付いている。リンリンリ~ン。
「ナイキのジャージって、鈴のおまけ付きなん?…いらんけど。」
なんて言いながらサイズを探していると、アディダスのジャージに鈴は付いていない。
「お~…考えたなぁ…鈴ならタグなんかよりずっとコストダウン出来てしかも効果的なカンジするもんなァ。…アディダスは不人気か。…ちゃっかり選り好みすんのか…。」
万引き防止の鈴であるらしい。アイデア勝ち。タグつけて出入り口にセンサー置いて、どんくらい費用がかかるかは知らないけど、鈴って100円でも5~6個は入ってるし、大量購入するならもっとお得に買えると思う。それにセンサーを通過すると鳴るんぢゃなくて、もう商品に触れた時から鳴ってるもんね。番犬が家の前通り過ぎただけでワンワン吠えると泥棒だって入る気なくすのと同じ心理で、パクろうかと思う気を殺ぐなコリャ。うまいなァ~ってか天才だなァ。最新防犯設備よりよっぽど安くてよっぽどキくんぢゃないかな~。「万引きするのを防ぐ」ぢゃ遅いもんね、テキはそれぢゃぁもう「万引きする気」を持っちゃってる。だから「鈴」ってのは気が利いてる。「万引きする気」を持たせなかったら実行のしようがないからね。腐った根性は根から断つ、鈴で。勇気リンリン♪アンパ~~~~ンチっ!腐った根性と言えばたった今、ウチにイタズラ電話がかかってきた。鳴って立ち上がってディスプレイを見ると非通知であったので勧誘か何かだと取らずにいたら、あきらめずに鳴り続ける。取ってみればかなりの雑音の中から男が蚊の鳴く声で「あのぅ…あの…」と言っている。せっかく集中してリズムよくタイピングしとったのにこの張合いもクソもない態度よ、私の楽しいリズムを邪魔しさらしたなこの野郎…とほんのちょっとだけキレて「もしもしぃ~?」と顎をしゃくらせて喰いついた。
「あのぅ…ボクぅ…ちょっと…聞いてほしんですけど…」
聞いて欲しいなら番号を通知しろ卑怯者め。通知したところで私の対応にブレはないが。
「ぁあ?もしもしぃ?どちらにおかけですかぁ?」
「あ…あのぅ…あの聞いてほしいん…」
「ぅあ?ど・ち・ら・に・お・か・け・で・す・かぁ?
「そのぉ…」
「ど・ち・ら・に・お・か・け・で・す・かぁあ?」
「き…きぃて…ほしい…」
「はぁ?ど・ち・ら・に・お・か・け・で・す・かぁ?
てめぇダレのナニの時間を妨げてると思ってんだよ許さねぇぞ。
「あ…あの…き…きぃ…」
「ぁあ?ど・ち・ら・に・お・か・け・で・す・かああああ?どの番号のダレにかけとんやぁ、ゆ・う・と・ん・ね・ん?ぅあ?」
「あの…番号は…適当に押した番号に…かけているんで…」
「アホかオマエはっ!
 テキトーなことすなっ!!」

切ボタン、プチ。
テキトーな番号にかけて話しを聞いてもらおうなんざ腐った根性、アンパ~~~~ンチ!電話リンリンリリン、アホパ~~~~ンチ!!

メンズのSサイズというなかなか無いサイズを求め、私たちはショピデに移動。する間に、関係車両以外の車が入れない「やや歩行者天国」の歩道に、ボーっとしてると時々チャリに轢かれそうになるやや地獄の歩行者天国に、青空の下プラスチックケースを重ねて置いてあるテーブルの横で、折りたたみ椅子に腰かけたニィチャンが、無言で何かを売っている。
「何かを…売ってるんだろうねぇ…」
とヘイポーと呟き合いながら歩を進め顔だけをニィチャンのほうに向けると、無言のニィチャンがやおら小声で叩き売り。
「ね、5つで500円でね。お得ですよ、通常1個130円カラなんでね。どれでも500円、ね。抹茶・チョコ・スィートポテト…ね。」
ね・ね・ね、てね。話しかけている風だけど誰も聞いちゃいない。
「なぁ…誰に言ってるんだと思う?周りにかな?それとも、私たちに説明してると思う?」
「僕たちかなぁ…?」
まぁまぁの幅がある道の向こう端とこっち端の位置関係なんだから、ニィチャン私たちに売る気ならまず何売ってるかを言わなきゃツカミに失敗だし、声、聞こえねぇ~…。私たちはニィチャンを半分通り過ぎてからノボリに気がついた。
「おっヘイポー!白いタイヤキやん。おやつ、白いタイヤキでよくない?」
「あぁ~行ってみよっか~」
威勢のないニィチャンは、5個セットになっているいろいろな味の白いタイヤキの、どれが値段的に一番お得なセットかを説明。「どの味が好きか」という所に売り上げの極意を見ていないようである。単価の高い味のセットが一番トクなので「これ、イきましょか。」とやっと聞こえる声で推す。
「黒あん・白あん、いらない。抹茶・チョコ・スィートポテト、のセットはないの?」
だって食べられなかったらいくら単価が高くても、得ぢゃなくてそれは酷。
「ないですねぇ…」
「あぁじゃぁ、さっきのでいいや。スィートポテト3つとチョコのやつにします。」
「あっはい!コレですね!ありがとうございますっ!!」
無いなら買わないと思ったのか、買うと申し出た私にニィチャン、驚く。
「こ、こちらですね、はい!ありがとうございます、助かりますっ!!」
えっ?!助かります?!いえいえいいえ、おやつ買ったダケでワタクシ、人助けをした覚えは…。ニィチャンは、私たちの背中にまで「ありがとうございます!」を浴びせるほど、助かったようであった。タイヤキ…海に逃げ出すトコだったのか。おなかのチョコレートが重いけど海は広いぜ心が、は・ず・む♪伊丹からだと2時間ばかしかかるで、海。
「…助かります!…て…言い過ぎぢゃない??」
ヘイポーは率直な感想を述べた。
「…なにもそこまでぢゃ…ナイよなぁ…??」
おやつにタイヤキ、というのが好きなヘイポーは月曜日の10%OFFを狙ってタイヤキを買うことがあるが、そこで「助かります」と言われたことはなく、逆に心の中で言っている「いつもは100円だけど月曜日は90円で助かります」と。なにもそこまでぢゃないので声にはしていないが。
「あのニィチャン、あの売上だけで喰うていってんのかなぁ…。『500円あれば夕食代は確保できた…助かります。』の、助かります??これ1パック売ったことが、そんなに助かることだったのかなぁ…。」
原価分差し引いていくら残ると言うのだ。商売っつぅのはキビシーのぅ。
「やっとひとつ売れたんちゃう…?…でも…大袈裟ぢゃない?めっちゃ。」
「確かに『助かります』は大袈裟よなぁ…むっさ。」

ショピデに向かった目的のひとつは『メイト』。ここは、『ファッション界の激安王ヘイワ堂』や『地域で一番安い店と言われ続けるためにオンセンド』のようなキャッチコピーのある店頭せり売り方式採用の店を「衣料品」にだけ絞ってちょっと「アパレル感」を出した店である。ヘイワ堂やオンセンドのようなせせこましさは無いが、リアルクローズユニクロやファストファッションH&Mほどの規模も無い。『アウトレット呉服店』とでも分類しようか「まずまず」つーか「ベター」つーか、個人的には「やれやれ」な店なんである。まァ安くてそれなりの質でまずまずの買い物が出来るのではあるが、接客が「やれやれ」。伊丹に住み着いて7年、メイトでの買い物は度重なるが、その接客の「やれやれ」加減はちっとも変わらない。従業員のおっちゃんを含む数居るおばちゃま販売レディたちも「褒めちぎり営業」の姿勢をしつこいまでに貫くのである。横に付く速さは宝石店のスタッフもビックリの音速。その速さの単位はもはや「秒」ではない。違う売り場に居る段階で既に「こちらのレディス衣料もね、ごらんくださいね、お寄りくださいね。」と誘ってくるのであるから、もうグイグイ。トイレに行くのに歩いていて目が合ってしまったら「いらっしゃいませ」と言われてしまうのだ。いらっしゃってねぇーよ、出しに行く途中だっつーの。とにかく『メイト』の従業員一同、片時もそっとしといてはくれないのだ。商品を手に取らないうちから商品の素晴らしさを売り込み、反応をせずにサイズや値段やドコ製かをチェックしていると、矢継ぎ早にフレーズトーク。「ジャケットですか?」「値段ですか?」「色ですか?」「サイズですか?」「普段のサイズは何を?」「ウエストは?」「身長は?」「コレですか?」「アレですか?」「ドレですか?」「取りましょうか?」「出しましょうか?」「鏡はこちらです」「こちらはジーンズです」「ワンピースもありますよ」「この値段ではなかなかありませんよ」…わしゃ、どれにどんだけ答えたらええねや?
ひとたび試着でもしようものなら、とにかく褒めちぎり。
「まぁ似合ってますよ」「カッコいい」「スタイルいいわ」「とてもオシャレ~」「これも似合ってますよ細いから」「それも似合いますねぇ足が長いから」「どっちでも合うわキレイだから」「あれも着てみます?」「イイですね似合ってますよ個性的」「この色も似合ってますステキだわ」「何を着ても似合いそうね」…わしゃマネキンか。ヘイポーと一緒だった今回はこの褒めちぎりに新たなフレーズが追加された。「お子さん?お母さんには見えないわ」いやいやいやヘイポーを連れていて母親に見えなかったら私は重大な罪を犯している、それは誘拐だ。朝、家主さんに「何年生になったんや?」と声を掛けられ「6年…」と答えた発音に難のあるヘイポーは「そうか~3年か~」と半分減らされていた。「運動会なぁ~ワシ、老人会のやつで見に行っとったんやでぇ~。」と言う家主さんに「ウチのコ6年生なんで、最後に組体操やってました。」とさりげなく12才アピールをしておいた。ヘイポーと私の見た目の年齢差は「友達」を超えている、親子でなければ誘拐でもしてなきゃ連れて歩けんぞな。

ベストオブメイトスタッフであるおっちゃんは、いつ行っても私のコトが記憶にござらんようで、私がこの激安さを見て驚きを隠せないはぢめての客だとでも言いたげに「安いで、しょ?」とか「イイで、しょ?」ゆぅて独自のイントネーションでもってメイトブランドを絶賛するのである。そのイントネーションが実演販売のひとに近い言い方であることも商品が安いことも、私は行く前から心得ていて、隠せる驚きがもう尽きているくらいなのだ。
「メイトなぁ…安くてええし買う気もあんねけど…しつけぇんだよなぁ…営業が。」
とても言葉は悪いが、本当に「しつけぇ」のだ。そのしつこさに、きっと悪気はない。それはわかるのだが、自分ひとりで吟味したい時に、半歩動けば「ステキで、しょ?」半身ひねれば「安いで、しょ?」右肩下げれば「それもイイで、しょ?」と言われてみたんさい?しつけぇよ、たいがいに。落ち着かねぇよ。アクビをしたら「眠いで、しょ?」とか言いかねない。
「いらっしゃいスタイル抜群だねこんにちは~」からはぢまるおっちゃんのマシンガンフレーズトークは、心も悪意もこもってはいないが配慮も遠慮もないノイズである。「着てみて着てみてまァかわいい」「羽織って羽織って似合ってる」「色もイイでしょ安いでしょ」「そちらも安いよトクねお得」フレーズのレパートリーは数限りなし。手に取る商品が変わる度に合いの手も入れる。「イイね~」「あ~イイねぇ~」「それもイイね~」「う~んイイね~」「あれもイイよ~」脱がせるカメラマンばりの「イイ」の入れ方。なんせ脱がせて試着させるのが目的だから。「足みぢかいからやめときな」とか「着ているあなたが不良品」とかのフレーズを言われているわけではないので、気ぃを悪くするでもないのだが、とにかく「いちいち合いの手を入れいでも…しつけぇよぉ…」と精神的に通常の買い物の5倍は疲れるのだ。メイト界に足を踏み入れる者は、強靭な精神力と右から左へと抜ける風通しのよい耳が要る。

ショピデのエスカレーターを降りてゆくと、フロアでバルーンパフォーマーを見かけた。小学生らしき児童2名を相手に風船で作った剣で格闘したのだろう、和解を求めてか話し合いの最中。私たちは下りのエスカレーター前でその模様を見てからエスカレーターで下りつつ様子をうかがった。示談になり児童は散る。するとバルーンパフォーマー、ヘイポーに向かって「風船あげるよ~ぉ♪」。パフォーマーが振りかざしたバルーンソードはクネクネにくびれ鋭さは無く戦い敗れた感があったので、自動ドアをカメハメ波で開けるという技が使えるヘイポーは「えー…」と「欲しくない声」がつい漏れてしまった。いつもチョモのおさがりで新品にありつけないヘイポーに私はついさっき、2~3年前からヘイポー御所望の「マント」を買ってあげたばかりである。ワゴンセールで2990円。
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白黒をはっきりさせないグレーな魔法が炸裂すること請け合い。バルーンソードなんてなくったって、きっと空も飛べるはず。しかしこの「いらない」のサイン「えー…」を、「欲しいのに…エスカレーターが自動的に僕を階下へ運んでる…」と残念の「えー…」に受け取ったパフォーマーは、こう叫んだ。
「戻っておいで♪」
これには私が「えーーーーっ?!」と言った。だって下ったすぐ左に出口があるのに、わざわざ半周して上りのエスカレーターまで戻れって?!
「戻れって…あのニィチャン戻れって言ったよ…ヘイポー…私たちこれから自転車に乗って帰らなきゃなんないのに…戻れってヒドいよ…戻っておいでって…そんなこと求められても困っちゃうよ…」
ゆっくり帰るから30分もかかるのにヒドいよ…。
「まぅ、戻らなくてええで。僕、そんな戻ってまで欲しいと思うような小さい子供ぢゃないから。」
そうだよな、見た目で判断して失礼なニィチャンだよね。小さいけど、半年もすりゃぁ中学生やっちゅーねん、風船が欲しい年齢ぢゃないよなヘイポー!…マント買ったらウキャウキャ喜んでたけどねぇ、ちみ。
「それにあの風船、戻る価値はない。」
オマエが失礼だな。
私はもっと大人の見方が出来るぞ。平日で子供も大勢は集まらないような昼間に次々と新しい作品を作り出すような無駄なコストはかけてらんないの。売上促進のためのパフォーマンスなんだから、夕食の買い物に来たオカンにくっついてる幼児に向けてのパフォーマンスに力を入れたいんだからな、クビれソード一本で3時間は凌ぐのサ。…あ…失礼かな私…つい…大人の本音が…。
「そうやな…戻らんとこな。材料があれば自分で作れるわけだしね。」
「え?まぅ、作れるん?」
「作ってやっただろー、小さい時に。いぬ~とか、ライオン~とか、ウサギ~とか。3本くらい割りながら作ったぢゃん。今さら作る気はないけど作り方なら知ってるよ…」
「作れるんやー…」
覚えてねぇのか…ちょっとした大道芸人みたいなコトは一通りやったぞ、コインも消せる。どうだ、オマエのカメハメ波よりスゲェだろぉ??米に絵だって描けるゼ。ライスドラゴンボール作ってあげようか?7粒集めたらデンプンがとれるゾ。

ちょっと出歩いただけで、こんなにも不思議に出くわすマチ。
…あきねぇなぁ。
「もぅ…ちょいと歩けばネタ増えて…書くこと山ほどたまっちゃうぢゃん…もぅ…イヤんなっちゃ~う。」
「まぅ…書かんかったらええねん、イヤやったら。」
「そんなもったいないこと出来るかっ!イヤぢゃない。ほんとはイヤぢゃないの、ウソついた。イヤぢゃないのにイヤってゆっちゃったー。あぁもったいない・もったいない。」
ナニがもったいないんだろう一体…。

ちょいと歩けばソコここで オモロ~アキナイマチ伊丹 誰かが書かなきゃもったいない 書けよカケカケ誰か書け 脚色せずともママいける 私はおヒマな伊丹市民 コレが書かずにいらりょうか ベベン

…あきねぇなぁ。
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by yoyo4697ru980gw | 2009-10-21 11:12 | +朝臣寺+ | Comments(0)

どうでもよいことを考えはじめたらキリがおへん どうでもえぇのについつい考えてまう どなたサンもその状態が「ミルニング」どすぇ


by MA