南部チャリ

近所の酒屋まで歩いてタバコを買いに行った帰り、道を渡った私の後ろで自転車のベルの音がした。自転車のベルの鳴らし方には鳴らす人の個性が出る場合が多い。私はベルの音を聞いたあと、避けるのも忘れそのままスタスタと歩き続けた。それほどその音はあまりに耳に心地よいのである。するとまた、ベルの音がなる。
チャ…リー
おおーっとそうでしたそうでした、はいはいはい…と心で返事をし出来るだけ端に避けると、私を追い越してすぐにそのおばちゃまが乗った自転車は、またベルを鳴らした。
チャ…リーチャリーン
そして、おばちゃまは右折。私の家も右折なので曲がると、前を行くおばちゃまはまたベルを鳴らす。
チャ…リーン
どうやらおばちゃまは、道が交差するところでは必ずベルを鳴らすようである。まっすぐに進むおばちゃまを観察すると、次の路地を左折する手前でベルを鳴らした。
チャ…リーチャリーン
曲がる時には2回、鳴らすことにしているようだ。曲がらない時の1回も曲がる時の2回も、どちらも優しい音色である。「チャリチャリチャリチャリっ!!」なんてな「オラオラどけどけ」と聞こえる鳴らし方ではない。まるでそよ風に和紙が揺らぎ、それで微かに鳴った南部鉄の風鈴のようである。透きとおるような涼しげな音色であってしかしあたたかみがある、というふうの音。

私は自分の家の方向に曲がったので自転車の姿が見えなくなった。
それでも、おばちゃまの南部チャリの音色はまだ聞こえた。

チャ…リー
チャ…リー
チャ…リーチャリーン


あ・曲がった。

チャ…リー

やがて聞こえなくなったおばちゃまの南部チャリの音色は、どこまでも「まっすぐ」。
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by yoyo4697ru980gw | 2009-09-18 20:43 | +ミルニング+ | Comments(0)

どうでもよいことを考えはじめたらキリがおへん どうでもえぇのについつい考えてまう どなたサンもその状態が「ミルニング」どすぇ


by MA