いらっさいましバンク

エアコン27度かけっぱなしの部屋で寝て翌朝6時、右膝の痛みで目が開いた。疼くような古傷を膝に抱えた覚えはないが…と訝り思案するに、あぁ秋になっていってるんだな…と思い至った。熱帯夜という熱帯夜がなかったこの夏であっても、設定27度のエアコンではキかないくらい寝苦しい夜があった。それが同じ温度設定で今はどうだ、朝に体が冷たくなるほどキいている。こりゃアレだねぇ、寒くなると年寄りの節々は痛むっていうあの現象と同じことが起きてんね。油切れが始まったらしい体は、あちらこちらが「冷え」で軋む。あぅ…タフなのは所詮、気力だけということか。鈍っている…体が鈍っている…こりゃイカン適度な運動をせねば。…とゆう理由で、都市銀行へ行ってきた。
「銀行だろっ運動とは関係ねぇだろっ」との突っ込みが聞こえる。
いかにも、銀行は運動とは直接的な関係はござらんよ。「銀行に行ってから」することと言えば、番号札を取って呼ばれるのを待つことである。百歩譲って「運動」と言えるとすれば、ソファーに座ってまだまだ呼ばれそうにないからラックから雑誌取ってまた座る、の屈伸運動くらいか。あんまり膝にキきそうもない。
しかしその都市銀行までは自転車で20分はかかる。こりゃちょっとした足腰の運動である。タイヤの空気が抜けているなんてないらん負荷もかかっているのだ。信号待ちをしている間、壁のちょっと高い位置に足裏で踏ん張ってアキレス腱も伸ばしてみたぞ。「銀行に行くまで」は運動だったもんねー結果的に。

ほんでぇー膝の痛みとはナンの関係もないんだけど、都市銀行ってあんなに楽しいトコだったの?知んなかった。とくに取引先があるわけでもないサラリーマン家庭の、他に職を持たない専業主婦である私には銀行口座というものが無い。公共料金の引き落としも家賃の振込も、むーちん名義で全て地方銀行でやっている。とにかく都市銀行はATMも窓口も「混む」という印象があるから。だから私は一度も都市銀行で口座を持ったことがない。デジタルなこの御時世に生きた化石の如き現金主義である、キャッシュで一括。しかし、家を購入するにあたって今から貯めてたんぢゃ20年くらいかかるみたいので、このほど住宅ローンを組むこととなったんである。そのローンの契約先銀行が三井住友という都市銀行である。

都市銀行…別世界。
地方銀行の異様な静けさとは対照的に、驚くほどガヤガヤしているのだ。よい言い方をしたら市場くらいの活気がある。地方銀行の雰囲気しか知らない私は、ATMブースを通り過ぎて窓口に行くまでの間に、ココは時代劇テーマパークか?と思ったほどだ。人気の窓口は何時間待ちでやんスか飛脚サンよぉ、教えてちょんまげ。三井住友銀行に集まる客と行員の間には、暗黙の共通概念があるように見えた。それは『時間が無い』である。今日という一日はきっかり24時間あるが、銀行窓口営業時間の9時~15時の間、都市銀行ワールドには都市銀行タイムが存在し6時間もある営業時間は都市銀行タイムでは正味2時間半というところか。それほど、客も行員も『時間が無い』前提で行動を取っているように見える。サバくのは大仕事。とくに行員においては「時間の無駄1分につき2センチの切腹」くらいのカンジ。時間を無駄にするほど傷が深くなって致命的。意識の確かなうちに615番のお客様を窓口へ…と、精神的に切羽詰まってる感すらあるのだ。な、何が起こっているよ都市銀行。

私は最初、地方銀行感覚で雑誌のラックから週刊文春を取ってペラペラ繰っていた。すると間もなくして女性行員が私の前を忙しなく通り過ぎながらこう言ったのだ。
「いらっしゃいませっ」
お客様が来たのだったらちょっと席でも「詰めてお座り」しようかと思い顔を上げると、誰もこちらに向かってはやって来ないではないか。女性行員は確かに「いらっしゃいませ」と言った。しかしそれは誰かを特定して言ったものではないようだ。この銀行内の全ての客に向かってそう言った。百貨店の催事場でクリアランスセール中のセレクトショップの店長の役割「いらっしゃいマシーン」である。人間の気配をセンサーで感じたらとりあえず「いらっしゃいまし」と言うことになっているロボットみたい。週刊文春の対談どころぢゃねぇ、要観察・要観察。

三井住友の銀行の真ん中には、何もしていないけど何でも出来そうな行員が2名、教壇のようなテーブルを前に立っている。そのテーブルには『ご案内』と書かれたプレートが乗っている。…コンシェルジェが居る。実践的かつ有益な情報を提供してくれるのだろうか。立っているのは2名だが、ウロチョロしている他2名もコンシェルジェ教壇を拠点としているようだ。さきほどのいらっしゃいマシーン行員も、ココに立ち寄る。5名のコンシェルジェはそれぞれに役割を担っているようだ。「187番ノ番号札ヲオ持チノオ客様 3番ノ窓口ヘオ越シクダサイ」というアナウンスが流れ、3秒後に客の動きがない場合、コンシェルジェがすかさず「187番の番号札をお持ちのお客様はいらっしゃいませんか~?」と肉声と肉眼で確認、番号復唱コンシェルジェである。コンシェルジェ教壇に立つ2名は自ら質問をするタイプのお客様を待っている、質問受身コンシェルジェ。もう2名は銀行内をウロチョロし、何か困ってはいるんだけど自ら質問をするタイプではないお客様を探しているようだ。通帳を手にキョロキョロしているとか、バッグの中をかき回しているような客にいち早く気付き声を掛けるのだろう、メイアイヘルプユーコンシェルジェ。5人体制のコンシェルジェで抜かりはない。が、番号札を取ればしばし待つことは避けられない。「1」「2」「3」と番号札の機械は分かれていて、それぞれに通常の窓口だったり、融資の窓口であったりするようだ。私は新規口座開設をするので「3」と書かれた機械から番号札を抜かなければならなかったのだが、通常取扱窓口である「1」から抜いてしまっていた。私の番号が呼ばれ窓口に行き、自宅で前もって記入していた用紙を差し出すと、窓口の行員はまず謝った。アンタ、大名行列の前でも横切ったんか?切り捨て御免をするつもりはないが。
「すいませんこちらはですね…あの…はい…ええっとですね…すいません、お預かりいたします。」
彼女はそう言って、私の持参した用紙を持って立ち上がった。そしてすぐに振り返り、「すいません、掛けてお待ちくださいませ。」とまたも謝った。「千徒様、大変お待たせいたしました。」と呼ばれた時、私は大変に待たされたこともなかったが、彼女の都市銀行タイムでは「10センチの切腹」というペナルティが課せられているかのような、痛々しい申し訳なさぶりである。そして彼女は座るでもなく立つでもない、腰に悪い姿勢で私にこう言った。
「あの…こちらはですね、窓口が一段低くなっているあちらの窓口となっておりまして…やはりそちらにあります「3」という機械の番号札を取ってお待ちいただかなくてはいけないことになります…申し訳ございません…。」
「あぁ、はいはい。「3」っていう機械の番号札ですね?わかりました。」
「大変、申し訳ございませんでした…。」
なんで?そんなに謝んなきゃなんないこと、してる??「3」の番号札とらなあかんかったのに独断で「1」からとったん、私やんけ?番号札をとるように彼女に促されたわけでもないしね。間違って窓口に来た私に窓口が違う旨、説明したわけやし、なんぞ謝るミスもなかった思うねけど。しかし私は、私の用紙を手にあっちゃ行きこっちゃ行きする彼女の行動と、窓口が違うという説明中に出てきた「やはり」という単語から、彼女の言動を推測した。

都市銀行タイムでの時間の損失は大罪なんである。窓口を間違ったのが客であろうとも、窓口に来るまで「客を待たした」ことになった窓口嬢は、なんとか順番が来たこの時点でこのまま本来の窓口へとスムーズに移動して手続きができんかと、上司に掛け合ったのであろう。しかしそれでは、間違えずに待っていた「3」の機械から番号札を取った他のお客様の待ち時間はどうなる、という問題が生じる。上司との「5分待たせたから優遇措置をどうにか」問答の末、果たしてルールは変わることなく私は「一から待たされる」という結果が言い渡されたようである。そのことを、窓口嬢はよかれと思ってやったのに最終的には「説明してはよぅに「3」から番号札を取らせたらよかったものを、下手に優遇しようと思ったがため余計に待つ時間が長くなってしもぅて…お菊よ…許してくんろ…おとっつぁんが不甲斐ないばっかりに…」てなコトでCMに入ってそのCM明けくらいの感覚だったのかな。お菊って誰だ?松たか子あたりが薄化粧で演じてるんぢゃないか?窓口嬢には「CM明けまで待たしてもーて…」という都市銀行タイムの無駄使いをした感覚があったかもしれないが、私は地方銀行よりも待たされなかったし、「混む」というイメージしか持っていない都市銀行に行くって決めた時から、時間的な余裕をしこたま持参しているんである。しかし窓口嬢が一見してつかんだ私というのはどうやら、「待つ時間なんて1分がせいぜいなんだかんねっ」という時間の無さらしい。だから彼女は「私の時間を奪った」のを詫びているようだ。世の中そんなに誰でも彼でもセカセカはしてねぇぞ?私、誰よりも時間の余裕がある人間だかんね。

正式な窓口用の正式な番号札を取って待つこと7分ほどだろうか、私の番号が呼ばれた。番号が点灯している窓口では女性が立っていて「大変、お待たせいたしました。」
と深々と頭を下げた。なんで?都市銀行、なんでそんなに謝るの??ゴメンナサイの大安売り、これでは「すいません」の価値が下がる。キレイなネイルを施した爪の窓口嬢は、口座の用紙を受け取って「こちらはご本人様にご記入いただいていますか?」と訊いた。
「いいえ、私が書きましたけど。」
ローンの契約者むーちん、その手続きしたひとむーちん、口座名義人むーちん、新規口座開設記入者むーちんぢゃない、…アカンらしい。厳密にはアカンってことではないんだけど、筆跡照合というシステムがあり筆跡が違った場合、50万を超える引き出しの際には受け付けることが出来ないと言う。それでもよいならば私の筆跡でむーちんの口座をつくることは可能だそうだ。
「…どうされますか?」
「…うぅむ…」
「本日、こちらの筆跡でお口座をつくっていただくことは出来ますが、後々、筆跡照合をした場合にお受けすることが出来ないということもございますので、同じ筆跡にされたほうがよいということでローンの手続きをしていただいた際に口座開設の用紙を前もってお持ち帰りいただいているんです。」
「あぁ…そうゆうことになっとったんですか。」
むーちん、そうゆう説明を受けたんだったらその説明を言わないと…二度手間ぢゃないか。
「はい…申し訳ございません…」
いいえ、申し訳はできてございますけどねぇ…述べるべき理由、たった今アナタ、言いましたよ。
「そうですか…んんんー…」
私は腕組みをして考えた。現段階ではっきり言えることは「50万を超える金を引き出す予定はない」ということである。50万を超える現金がこの口座に入るのか、とソコがそもそも「入る」とは言えそうにない。じゃぁ今日、開設を。…と、この先の未来をここで見限ってもいいのか?そんな今の足元しかみないことでどうする?私はむーちんに電話して筆跡照合の説明をした。
「カネを引き出すことなんかナイから、えんちゃう?」
むーちん「大器晩成やからな、オレは。」って言ってたぢゃん。いつから大器晩成期に入るかしんないけど、八十、九十で財を成すとむーちんが思わんで誰が思うんぢゃ。いつか50万を超える現金を引き出せ、そしてすぐにまた入れろ。…何がしたいねーん。
「…うぅむ…明日…本人が書いた用紙を持って来たほうがよさそうですねぇ…んー…」
私はそう結論を出しかけて、また迷った。腕組みをして沈黙。だがその沈黙の時間でさえ窓口嬢の切腹を左右するらしい。
「奥様の明日のご予定は…」
「よ、予定ですか?あぁ…そりゃ予定なら…ありますねんけど…」
私の予定を聞いて、窓口嬢はどうしてくれるのだろう?私の散歩の予定に合わせて、おやつ休憩を見計らいお知らせメールでも送ってくれるのだろうか。
「もしお忙しいようでしたら…」
「いえいえいえ、時間を作るのはこっちで作りますねけど…」
時間調節の差配には及びません…あぶねぇ…空いてる時間に「新規口座開設」のアポをこぢ入れられるトコだった。いいよいいよコッチでやるよ、サイクリングサイクリングヤッホーヤッホ~イを30分へしたら、ええだけやし。明日、本人記入の用紙で出直すと告げると、受付嬢は最初に持参した用紙に貼り付けてあった「お届け処理番号」のような数字のシールをこちらに貼っておきますね、と新しい用紙に貼り付けるために剥がそうとした。しかし、受付嬢のネイルアートが施された爪はやや長く、そんな末端が立体的に装飾された爪でシールをカリカリとやるのはとてもじゃないけど不可能で、受付嬢は指の腹で懸命にシールを剥がしにかかった。シールの先は剥がれたがセレブ調ネイルの指先ではシールの端がつかめない。グズグズグズーと指の腹でつかんだシールは半分より先は用紙もろとも根こそぎ剥がれた。シールの最後には用紙がピラ~と尾を引いている。半分だけの粘着力を駆使して受付嬢は、これでもかとシールをなぞって貼り替えた。
「すいません…ちょっとグチャグチャになりましたけれども…」
「あ…はい…」
だいぶだね。だいぶグチャグチャになっとるね。まぁ、完全に剥がれてしまうことはなさそうだから私としては差し支えない。ここに書いても意味はないが今後のためにも受付嬢には、おばぁちゃんの知恵を拝借することをオススメする。接着されたシールを剥がす場合、カリカリと出来ずにがっしとつまむしか方法がないのなら、シールを剥がす方向とは逆方向に少々引っ張りながらジワジワと剥がせば、ココまで下の紙を道連れにすることはなかったかもしんないよ。
「では明日、確認資料としてご主人さまと奥様の免許証をお持ちください。わたくし川崎と申します、わたくしの名前をおっしゃって受付をしていただいたらわかりますので。」
都市銀行窓口、指名制なのか?指名料は取るんかな??川崎さんじゃなくっちゃイヤってダダ捏ねる気はナイけどおいちゃん、指名しちゃおっかな~…いや新規口座開設のことわかってるひとなら誰でもいんだけどな、おいちゃん。一番近い窓口に座ってるネェちゃんで。

こりゃ~おいちゃん明日は都市銀行に手帳持ってかなきゃイカンのぉ…突っ込みドコロ多くってとても見ただけの記憶じゃぁ覚え切れんぞな。イイとこが抜けちゃうと都市銀行をこの一回でおいしく喰えないし。だってWeb通帳で開設してネットバンキングで済まそおもてるから、もう二度と都市銀行に用事はない気がすんのよ。ざるソバをトク盛りで注文して「きた・きたっやったぁ~っ♪」と喜び「いっただっきまっはぁあぁあああ~っすっっ!!」とコーフンし過ぎてソバの上に乗ってた刻み海苔を吹き飛ばしちゃった、なんてなったら誰だってヤじゃない。テーブルの上に飛んだくらいなら拾って喰うちゃうねんけどね、まぁ飛んだ瞬間はちょっと固まんじゃん。そうゆうのってデリシャスボルテージを下げるよね。だからいるわけよ、書き留めることの出来る手帳がね。味わいってサ…結局、備忘録を作んなきゃはぢまんないんだよね。

さぁて、あんまり三井住友銀行が楽しいもんだからついなが~~~くなっちった。
私、何メートルの切腹かな。かなり深いぞ、傷。てか貫通してる。
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by yoyo4697ru980gw | 2009-09-10 00:09 | +in the sky?+ | Comments(0)

どうでもよいことを考えはじめたらキリがおへん どうでもえぇのについつい考えてまう どなたサンもその状態が「ミルニング」どすぇ


by MA